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藤々会の日記 一年の活動の様子をお届けしたいと思います!お能に興味を持っていただければ嬉しいです!(^v^)

2020.3.19 おのれひとり笑みの眉ひらけたる 

初夏、京の五条の通りに停めた牛車の中で、光源氏は騒がしい往来の有様を眺めていました。
そこにふと、白い小さな花が家の垣根に咲いているのを見つけます。
その花は優しく微笑みかけるように咲いていました。
花は暑くて騒がしい町の中で、光源氏の心に涼しさを与えました。

貧しい家の軒先に咲いた花。
日頃は華やかな宮廷文化の中心にいても、光源氏は可憐に咲いたこの小さな花に目をとめました。
もし今、窮屈不自由な環境におられる方がありましたら、どうぞこの小さな白い花のように、
日頃は誰の目にもとまらない小さなことに、心をとめてみてください。

みなさま、15日藤々会にお越しくださり、誠にありがとうございました
会を催すにあたって、様々に心を悩ましました。
本当にできるのか、現実を見ながら、それでも祈るような気持ちでした。
あらゆる工夫を凝らして、お客様に安心して能を楽しんでもらえる環境を提供したつもりでおります。

例年ですと、この次は5月4日(月・祝)に岡山後楽園能舞台で素人会が開かれる予定ですが、
今年はまだ詳細未定でございます。
今のところ、少なくともお茶席は休止という方針で、また舞囃子も秋に延期でございます。
楽しみにしてくださっていたみなさまには申し訳ありませんが、今はより大きな危険を回避することが重要です。


  雲の上人の 舞楽の声々に 霓裳羽衣の曲をなせば 
 山河草木 国土豊かに千代萬代と 舞ひ給へば
  官人駕輿丁 御輿を早め 君の齢も長生殿に 還御なるこそ めでたけれ

またのびのびと舞台で謡い舞いながら、みなさまと一緒に能を楽しむ日が来ることを、今は静かに待つことといたしましょう。

2020.2.15 よしあし同じ草の名
みなさまお久しぶりです! 
ものすごくご無沙汰してしまいました・・( ;∀;)
新年のご挨拶もうっちゃらかしておりました。

今日は昨日、京町屋で行われた、第3回 謡講についてリポートします。
今年取り上げられた曲は「芦刈(あしかり)」。
爛漫難波の御津浜で、再会を果たす夫婦の話です。

この題材は和歌集や物語などの中で様々に言い伝えられてきたお話で、京都の祇園祭の山鉾の一つにも
芦刈山」というのがあるのです。今回この曲にした理由の一つでもあります。

「芦刈」は能としての上演回数はあまり多くはありませんが、芦刈り男が笠を持って舞う、「笠之段」は、素人会でもよく出る演目です。
今回の謡講ではこの笠之段を中心に、山崎福之先生の解説実際の謡を交互に聞いてもらい、より深く曲を味わってもらうことを心がけました。

江戸時代、京町屋で謡を楽しんでいた人々もかくやあらんと思いながら、謡の言葉の魅力に浸りました。
あいにくのコロナウイルスのためどこも人少なですが、今年もまたこのような機会を作っていただけて有難かったです。

次回は2月2日に行われた今年の初会についてです!ᐠ( ᐢ ᵕ ᐢ )ᐟ

2019.12.25 クリスマスプレゼント
みなさま、今日はクリスマスですね!!
我が家では今日クリスマスケーキをいただきます(今年はチョコケーキなんです、楽しみ

さて、クリスマスということでみなさまにイベントのお知らせです!
一昨年から縁があって、京町屋にて謡講をさせていただいております。
山崎福之先生の解説と実際の謡と型とを織り交ぜて、
京町屋で能の魅力に触れてもらおうという取り組みです。

一昨年は「松風」、去年は「熊野(ゆや)」で、それぞれ左の写真のように、見どころの説明があった後で、実際に演技を見るという流れでした。
(上:「松風」から、潮汲みの場面、海女が扇で海水を掬い取って桶に入れるしぐさ。)
(下:「熊野」から、熊野は和歌を書いた短冊を平宗盛に手渡す。)

そして来年も2月15日(土)にすることが決まりました。
曲はの季節にふさわしく、「鞍馬天狗(くらまてんぐ)」を取り上げます。

まだまだ寒い時節ではあろうかと思いますが、ぜひお誘い合わせの上、楽しみにお越しください!

それではみなさま、メリークリスマス!!幸せな一日になりますように・・・!


そして良いお年をお迎えください!!

2019.11.11 秋風は吹けども
みなさんこんにちは!ご無沙汰しております。

ずっと更新を怠っていまして、申し訳ありませんでした・・。
めちゃくちゃ忙しくて・・。
でも先日の11月4日秋之大会で、今年の藤々会の舞台はとりあえず終了いたしましたので、今年を振り返り来年を目指してちゃんと更新していきます!(*´ω`*)

というわけでまず今日は4日の振り返りですね!

秋らしい一日になって、例年は風が冷たく感じることもありますが、今年はその点大丈夫でした。ほどよい気温だったので、お客さんも最後まで結構残ってくださってました。

今回は舞囃子が六番あって、どれもおもしろくて見応えのあるものばかりでした。舞も神楽、盤渉楽、鞨鼓など多彩で、また秋の風情あふれる「野宮(ののみや)も出ました。車争いの場面と嵯峨野に虫の鳴く情景とが描き出された、至高の曲の一つですね。いつの日かで演じてみたいものです。

「熊坂(くまさか)」の長刀さばきも見事でした!あれは何度見ても飽きないものですね。長刀の基本的なものから派手な型まで、すべてが盛り込まれていて、よく考えて作られたものだなあといつも感心してしまいます。

そして秋、といえばやはり「班女(はんじょ)」は欠かせない曲の一つでしょう。
秋になると捨てられる扇に自分の身の上を重ねた謡は、女性の恋慕の気持を美しく紡いでいきます。
  
  夫(つま)の約言(かねこと) 必ずと夕(言う)暮れの 月日も重なり                         秋風は吹けども 荻の葉の そよとの便りも聞かで  
  鹿の音 虫の音も かれがれの契り あら由なや 
   形見の扇より 形見の扇より 
  なお裏表あるものは 人心なりけるぞや 
   おう(逢う)ぎとは空言(そらごと)や 
  逢はでぞ恋は添うものを 逢はでぞ恋は添うものを

秋はいい曲が多いですね。お客さんたちも満足してお帰りになったみたいなので、良かった良かった(*´▽`*)

また来年も楽しみです!!
(左:仕舞「班女」 右:舞囃子「熊坂」)

2019.9.11 天引八幡宮
先日、京都先端科学大学能楽部のメンバーと園部町にある天引八幡宮で仕舞を奉納してきました。

ここは亀岡と篠山のちょうど中間あたりに位置していて、私たちは太秦から亀岡、湯の花温泉を抜けてマイクロバスでたどり着きました。

本当は本殿に連なる舞殿(まいどの)でするはずだったのですが、スズメバチ(地元ではアカバチというんですね、初めて知りました)が出るということらしく、町のみなさまが急遽少し横にステージを作ってくださいました。
開放的な舞台でのびのび舞えて気持ちよかったです!
これが初舞台というメンバーが3人いて、ちょっと緊張していましたが、ちゃんとうまくできていたので良かったかなと思います。
九月なのにまた少し暑さの戻ってきてしまった日でしたが、今後100年は残る!という記念写真町の方々と一緒に笑顔で映ってきました。

おいしい食事で丁寧にもてなしていただいて、本当にありがとうございました
感激したとの感想をいただき、嬉しかったです!
またこのような機会があったらいいなと思いました。(^v^)

能楽部は今週末、太秦の学祭でお昼頃に仕舞のパフォーマンスをします!こちらもぜひ!

2019.8.28 一樹の蔭の宿りも他生の縁と聞くものを 一河の流れ汲みて知る その心浅からめや
なんと月に2回目の更新となりました!
最近では非常に珍しいことですね(自分で言うか・・)

今年の京都でのの素人会の番組ができあがってまいりました。

和歌でも漢詩でも、文学の良い場面はすべからくそうですが、能もやはり春と秋の曲がほとんどです。
今回は秋なので何か秋らしいタイトルをと考えましたが、よくみると春の曲が多くて・・うーん・・と考えて「松虫」から一節取りました。
今年は夜になるともう虫の音が聞こえてますね。

といえば寂しいような切ないような、特に誰かのことを想っていると一層そういうものが積もっていくような気がして・・相手はどのくらい自分を想ってくれているだろうか・・その心の深さを知りたくもなりますね。

それと、番組を見て気づかれたと思いますが、「鶴亀」の仕舞がが三番もあるんです!
鶴亀はでもでも一番初めに習う曲なので、それだけ新しく舞に挑戦する方がいるということは本当に楽しみです (ღ*ˇᴗˇ*)
あの広い舞台をひとりじめするのは、すごく心地よいです!

秋の会は9月の秋分の日あたりか、10月の半ばか年によって違うこともあります。今回は10月なので台風・・来ないでほしいけどどうでしょうね、来ないことを祈ります

例年どおり、お弁当(早い者勝ちです)あります。
お茶席もいたしますので舞台を見ながら合間にお抹茶お菓子、楽しんでいってください!

それではまた!

2019.8.6 夏かと思へば 雪も降りて
(上:邯鄲 下:兼平)

みなさまお久しぶりです、ずっとおろそかにしてた更新、やっとできる!
(けど実はさっき気づいてしまったの・・大事な仕事をひとつ忘れていたことに!あちゃー これすんだらしますから!)

さて、先日、岡山のルネスホールにて毎年恒例の夏の浴衣会が行われました。
もう毎年のことですが暑いですね京都なんてもう・・。
岡山も京都ほどではないにしても、やっぱり相当暑いです。
この会場はすごく涼しいのでなんてことはないんですが・・。今日の題は願望ですね。
夏の後楽園の能舞台なんて、想像しただけでが出ます。

今回の会では、名曲がたくさん出ました。「井筒」「山姥」といった中世の世界観あふれるものから、
藤戸」のような悲劇的な物語まで、みなさん思い切り声を出して楽しんで謡っておられました。

若い人が理不尽に殺されたりする事件が近ごろ多いせいか、「藤戸」を聞くといつも以上に胸に込み上げるものがありました。本当に、名曲だなと思います。

ちょっとだけいいニュースもあります。
今回はお休みの方もご家庭の事情などでお休みの方が何人かおられましたが、飛び入りで参加してくださった方、
また特別参加してくださった方が力を発揮してくださいました。
秋の会では小さな女の子もデビューすると思います。 ご期待ください!

2019.6.18 夕顔の半蔀、押し上げて
みなさまこんにちは!
あっという間に日が経ってしまいましたが、先日の入門鑑賞会が無事に盛会でしたことをご報告いたします!

まずは写真にもある「半蔀」。
この曲は「源氏物語」をベースに作られていて、「源氏物語」の文章がほとんどそのまま謡の文句に取られているといっても過言ではないと思います。

光輝く貴公子・源氏の君と、夕顔の女の出会いのきっかけは白い花。
 町の喧噪の中、牛車に乗っていた光源氏は、ふとある家の垣根に美しい白い花が咲いているのに目をとめ、その花の名をお付きの人に尋ねます。

  かの白く咲けるをなむ、夕顔と申しはべる。  そう、花の名は「夕顔」でした。

光源氏は「一房折りてまゐれ」と命じます。すると童が白いゆかしい扇を持って出てきて、「これに置きてまゐらせよ。枝も情なげなめる花を」と言うので惟光(光源氏の従者)がその白い扇に夕顔の花を一枝乗せて光源氏に差し上げるのでした。
 その後、その贈られた扇を見ると、歌が書き付けてありました。

  心あてにそれかとぞ見る白露の光そへたる夕顔の花
(当て推量に夕顔の花かと見えたことです、白露の光(光源氏)のそばにある美しい花は。)

 以来、光源氏は名も素性も隠して、この家の女主人(夕顔の女)と逢瀬を重ねます。

 能では、「立花供養」の場に現れた夕顔の花、そして女の亡霊がこの光源氏との儚い恋に思いを残し、昔を懐かしみます。

  なほそれよりも忘れぬは。源氏この宿を見初め給ひし夕つ方。
  惟光を招き寄せ。あの花折れとのたまへば。
  白き扇のいたう焦がしたりしに、この花を折りて参らする

結びに、毎年このような会ができますこと、いつもながら感謝いたしております。
みなさまのご理解ご協力あってこそと本当に心の底から思います。
昨今、凶悪な犯罪や先行きの見えない不安な世の中にあって、こうして文化的なことに携わっていられることを、ささやかながら誇りに思い、また次回もみなさまのご期待に添えられるよう、精一杯努力して参ります。
どうぞこれからも藤々会、ひいては能楽の世界をあたたかい目で見守ってくださいますよう、お願いいたします

来年も、がんばるぞー!!(๑॔❛ꇴ❛๑॓)۶⁾⁾

2019.5.6 梅も桜も盛りなり
みなさまお久しぶりです!!
更新を怠っている間に、改元して令和になってしまいました。

 さて、一ヶ月前に決まったこの「令和」という元号に、山崎家も俄に騒がしくなりました。
 例の如く藤々会の山崎福之先生が万葉集の研究者であることから、携わっている岩波文庫『万葉集』の編集の方や、新聞各社の方からお電話やメールでの問い合わせが相次いだためです。
 詳しくは岩波文庫のページを御覧ください(https://www.iwanami.co.jp/news/n29468.html)。

 一次のブームとはいえ、これほど万葉集が注目を浴びるのも珍しいでしょうね。
 あらゆる旅行会社が祝・改元万葉集ツアーを組んで、みなさまをお待ちしているようです。
 ある旅行会社のツアー計画案を拝見して、「旅人号」に乗車して改元の地を巡る・・とかそんなキャッチコピーを見て、千年以上も経ったらどうなってるかわからないものだな、と思いました。
 
 とにもかくにも元号は改まりましたが、藤々会変わらず楽しくまいります。
 5月4(土)、後楽園能舞台にて春之大会が催されました!(๑´∀`๑)_尸゛
 このたびは、舞囃子がなく、また十連休ということでお客さんがどのくらい来てくださるものか、少し寂しい会になってしまうのではと懸念しておりましたが、ふたを開けてみると例年に劣らずたくさんの方がご来場くださり、本当に嬉しかったです。

 舞台はといえば、令和の典拠ともなったにまつわる「梅枝」「箙」「梅」や、にまつわる「西行桜」「桜川」「弱法師」をはじめ、花に注目すべき曲が特に多かったような気がします。いつの時代も花が咲いたり散ったりすると様々な感情がわき起こるものらしいですね。素謡は「姥捨」や「安宅」が出ておもしろかったですが話せば長くなりそうですからまた別の機会にしましょう。
 
 今回は後楽園の方で新しく椅子購入してくださったのでそれを初めて使用させていただきました。
 その甲斐あってかお客様には楽な姿勢で舞台を堪能してもらえたのではないかと思います。
 後楽園は普通の劇場とちがって客席の設営をしなくてはならず、それが大きな悩みの種なのですが、この経験を生かして
5月25日能楽鑑賞会でも頑張ろうと思います。
 
 新しい時代が、本当に人々が美しく心を寄せ合い、文化を育てる時代になることを願っています。
 ぜひみなさま見に来て下さいね!(○´v`○)


2019.3.20 堰きとめて桜川になそうよ
 みなさまお久しぶりでございます!
 更新が滞りがちで申し訳ありません・・。

 先日、毎年恒例の春の素人会が河村能舞台でありました!!
 毎年のことですがやっぱり楽しいですね。
 特に今年は舞囃子が七番もあったのでにぎやかでした。

 あいにくの微妙なお天気だったのですが、例年と同じくらい大勢のお客様がいらしてくださったので嬉しかったです (○´v`○)
 私の友達も何人か来てくれて楽しんでいってくれたみたいで、良かった~

 
 春の曲
も多い中で「桜川」のお囃子は自分も謡っていて気持ち良かったです。
 「桜川」のシテは、水を堰き止めて、桜の花びら流れていかないようにと、必死に桜を網で掬い集めるのですが、それはその桜が我が子・桜子と思えるからなんですね・・。
 また、押し寄せる水に大事なものが流される昨今、「桜川」の母の狂気がいっそう身に染みてあわれでもありました。

 今となりの部屋からテレビのニュースが聞こえてきて、どこやらで桜が開花したということらしいです。
 今年はなかなか暖かくなりませんが、いよいよ桜の季節がめぐってきますね。
 数年前に訪れた吉野の桜は本当に見事で、蔵王権現片足を挙げた姿は本当に雄々しいものでした。

 
 素謡の方でも「山姥」「松風」と大曲が出ました。
 どちらも大変に難しい曲で、お稽古に苦心され、また工夫されたのがよく伝わってきました。
 ああいう曲は何度聴いても飽きないです、不思議と。
 私は「山姥」のツレ、百万山姥と呼ばれた曲舞の名手である遊女の役だったのですが、似たような言葉が多くて、覚えるのは簡単ではありませんでした。
 簡単ではありませんでしたが、舞囃子は「邯鄲」を盤渉楽(ばんしきがく)の笛で舞いました。
 祖母が師範になった時に作った藤色の紋付を初めて着たので、またとても良い記念になりました。

 
 みなさまに助けられて、いつもいつも滞りなく、そして華やかしとやかで時には豪快な舞台をお届けできたと思います。来年もまたがんばります!!

 
 来年は岩下京子さん「半蔀」のお能をされます!!(๑´∀`๑)_尸゛
 みなさまお誘い合わせの上、ぜひぜひ!いらしてくださいね~!

(水堰きとめて:桜川)
(二月の雪、衣に落つ:高砂)

(一足をひっさげ:嵐山)

2019.1.12 初春のお慶びを申し上げます
 みなさま、明けましておめでとうございます!!
 本年もどうぞよろしくお願いいたします!

 さて、新年のご挨拶が少し遅れてしまいましたが、今年最初のニュースはここ、京町屋から。
 
 去年の3月にも「松風」を取り上げて謡講の催しをしたのですが、今回はその第二弾です。
 今回は秋の名曲「松風」に対して春の名曲「熊野(ゆや)を題材にしました。
  はじめに京都府立大学山崎福之先生に「熊野」の簡単な解説をしていただき、続けて謡を披露いたしました。来てくださった皆様にも一緒に謡ってもらい、少し早い春に浸っていただきました。
 
 「熊野」というのは女性の名前です。遠江国(今の静岡県)の池田の宿の人だったのですが、平宗盛(清盛の息子です)の寵愛を受けて、都で宗盛の側近く仕えていました。
 しかしある日故郷から、老いた母が病気であることを知らされます。母からの手紙を宗盛の前で読み上げる熊野。そこには、病気でもう先が長くないこと、最後にひと目だけでも子どもに会いたいという切実な母の思いが綴られていました。(← ここが「文の段」です。写真二枚目です。)
 
 熊野は宗盛に故郷へ帰る許しを請いますが、宗盛は強引に花見見物に彼女を連れ出します。
折しも都は春爛漫桜の美しい東山牛車で向かいます。それでも熊野の心の中は病気の母親のことでいっぱいで、賑わう都の有様とはまるで逆でした。
 そんな中、宗盛は舞を所望します。悲しみを抱えつつ舞を舞う熊野でしたが、ふとそこへパラパラが降ってきます。その雨につられて桜の花も散っていきます、熊野にはその花びらがまるで病気の母の命が儚く散るように思えて、それを扇で受け止めます。
 
 そして宗盛の前で歌を詠んで短冊を手渡します。(←写真三枚目です)
   いかにせん都の春は惜しけれど 馴れし東(あずま)の花や散るらん
 都の春は惜しまれるが、馴れ親しんだ東の花(母のこと)が散ってしまっているだろうというのです。これを聞いて、さすがの宗盛も哀れに思い、熊野に故郷へ帰ることを許します。
 
 
 一連の謡講の後には別のお部屋に移動して、町屋の方がお茶とお菓子をふるまってくださいました。すごく美味しかったです(^v^)えへ

 そこで「熊野」の実際の舞台写真古い謡本なども手に取ってみていただけるようにしました。
 みなさまにご満足いただけたようで嬉しかったです!!
 
 
 またこんな機会を作っていただいて、とても有難かったです!
 続くといいなあと思いました!


2018.11.15 楽の音に惹かれて・・
みなさまこんばんは!
先日の岡山の秋之大会も恙なく終わり、今年の藤々会の発表会も一段落いたしました。今日はその先日の会のご報告をしたいと思います。

今年は暖冬だということもあってか、寒すぎることもなく良い天気に恵まれて本当に助かりました。たまに風が冷たくてお客様がどんどん帰ってしまわれることがあって、困るんですよね。
あまり見ている余裕はなかったものの、後楽園のお庭に紅葉も進んでいるようで、まさにとてもよい行楽日和だったようです。

今回は例年に比べ舞囃子の数が少なかったので祖母が気に病んでいた節もありますが、それでもお客様がじっと真剣にご覧になっていたのが写真からも伝わってきます。
舞う人謡う人奏でる人の魅力と、の魅力がうまく合わさっているからだなと感じました。これからもみなさん上達されていくと思います!

にまた乞うご期待!ですね(o^ ^o)
あ、その前に2月ごろ初会がありました・・!


今年も無事に一年の舞台を終えることができて、ほっとしています。

来年も同様に、楽しい舞台をお届けできるよう、鋭意努力してまいります!!

2018.10.27 心づくしの会
(後楽園舞台近くの廊下にて。出会いがしらに母を撮影。) みなさまご機嫌いかがでしょうか、だいぶ秋らしくなってきましたね。

もうすぐ岡山の秋の素人会ですが、実は不思議と、会が近付くと新しく会に入りたいという方が来られることが多いんです。もちろん体験とか、一度見学にとか、いろいろなんですけども、なぜかそれが会の前が多いんです。本当に不思議で、京都も岡山もそうなんです。

よろづ文学作品においては重要な季節です。
能の作品も多くは春と秋のもので、次の会に出る曲も名曲ぞろいです。

松風」(素謡) 源氏物語「須磨」の名文を借りて、松風・村雨姉妹の亡霊が在原行平を恋い慕う有様を描きます。「心づくしの秋風に、     海は少し遠けれども かの行平の中納言、関吹き越ゆると詠め給ふ」
龍田」(囃子) もみじ歌枕として名高い龍田川。川に散りしいた紅葉は錦の如く。龍田の明神の神楽 をぞんぶんにご堪能くださ      い。
野宮」(仕舞) かつて光源氏六条御息所別れを惜しんだ嵯峨野の野宮。能なら舞台正面に鳥居があります。それを越えようとす      るおもしろい型をどうぞお見逃しなく。
井筒」(仕舞) かつて在原業平と契りを交わした井筒の女の亡霊は、彼の形見の衣装を身につけて舞 い始めます。そして子どもの      頃二人で遊んだ井戸をのぞいてみると、そこに見えたのは・・
小督」(連吟) 帝の寵愛を受けながら宮中を退いた小督の局。密命により彼女を捜す仲国は、月夜に秋の深まる嵯峨野へとを進      めます。
 
説明とも見どころともつかず適当にまとめましたがこんなものでしょうか。
秋の曲はどれも月が美しく風が吹いているような雰囲気がありますね。
後楽園の紅葉はまだ先でしょうか?
当日は寒いかもしれませんのでご注意くださいね!

2018.10.27 チャレンジ 
今日は先日の会のご報告です。
10月21日河村能舞台にて京都藤々会の秋之大会を無事に開催いたしました!

昨年は台風が来てしまい、お客さんも少なくなってしまいましたが、今年は晴天で、倍近くの方が来てくださいました!良かった良かった(☆´∀`人´∀`☆)

秋はお囃子はありませんが、その代わり独吟が結構ありまして、前にも申しましたがこれがかなりチャレンジ科目らしいんですね。
やっぱり一人で謡うとなると、責任も重いしお稽古にもが入るみたいです。

かくいう私は野守の仕舞をして三回も飛び返りして・・でも日頃の運動不足がたたって次の日は少し体がだるかったです(汗)

運動不足にお悩みの方、お能はじめてみませんか?
絶対楽しいですよ~~!(*≧ω≦*)

2018.10.12 天と地と人と
みなさま、たいへんご無沙汰いたしております!

 先週の土曜日岡山後楽園で能をたのしむ会が開催されました。
台風が迫っておりましたので心配しましたが、うまいこと逸れてくれました。
それでも強風でいささか珍しいハプニングも生じましたが(あんなこともあるんですねえ・・)

 今回演じられた曲は「東北」「野守」
特に「野守」は春秋通じて初めて上演いたしました。
私も京都では二回見たのですが、どちらも小書き(特殊演出)で黒頭と白頭(頭の毛の色が黒だったり白だったりして、少し動きも違ってくる)のものだったので、赤頭は今回が初めてでした。

 野守の鏡、と言われても何のことだかすぐにはわかりませんよね。
それも当然で、これは中世によく知られた和歌説話に拠った話だからです。よほど国文学に詳しい方でなければ御存じないでしょうし、もう一般には通用しないと思います。
そういうこともあるのであまり上演頻度は高くないのかもしれません。
でも、今回見てみると、すごくいいお能だな、と思いました。というのも、詞章がとてもカッコイイんです。

野守、とは奈良の春日野(今は鹿さんがたくさんいて有名ですが)の地を守る人のことです。
 昔、天皇が春日野で鷹狩りをしていると、その鷹が行方不明になってしまいました。みんな必死で捜したけれど見つからない。すると野守の老人が鷹を見つけたのです。なぜ居場所がわかったのか。それは野の水に鷹が映っていたからだったのです。それでその水を野守の、と言ったというわけです。
 そこに、その鏡が実は野の塚に住むが持っていた鏡で、鬼は昼は野守の姿となり、夜は鬼の姿に戻った、という話が付随してきます。
 次のような和歌も詠まれていて、有名になっていくんですね。
 
  はし鷹の野守の鏡得てしがな 思ひ思はず外(よそ)ながら見ん  (新古今和歌集)

   (はし鷹の野守が持つという鏡を手に入れたいものだな、私の恋する人が私を思ってくれるかくれないか、遠くから鏡に照らして見たいものだ)

こんな背景を踏まえながら詞章をみていくとちょっと理解の助けになりそうでしょうか。
旅の僧の前に現れたこの怪しげ~な老人の正体が、実は野守の鬼なんです・・

  (僧) げにや昔の物語、聞くにつけても真の野守の鏡見せ給へ
    (老人) 思ひ寄らずの御事や、それは鬼神の鏡なれば、如何にして見すべき
  (地謡) さてや鏡の在所、聞かまほしきに春日野の
    (老人) 野守と言ふも我なれば
  (地謡) 鏡はなどか
    (老人) 持たざらんと

 鬼神は、天上界から地獄の様子までくまなく鏡に映し出し、また人間の非道を正す有様を見せて奈落の底へと帰っていくのでした。

   東方降三世明王(とうぼうごうざんぜみょうおう)この鏡に映り

   又は南西北方を映せば
         八面玲瓏(はちめんれいろう)明らかに
   を映せば 
       非想非々想 天まで隈なく
   さて又大地をかがみ見れば  
                 まづ地獄道 
             (略)
   罪の軽重、罪人の呵責、打つや鉄杖の数々、
                       悉(ことごと)見えたり
             さてこそ鬼神に横道(おうどう)を正す 
                         明鏡の宝
なれ

地獄の鬼に鉄の杖でむち打たれるなんて・・(汗)正直に生きていこう!

2018.8.29 仏教大学にて菊慈童のワークショップいたします!
来月の23日に、菊慈童をテーマに能のワークショップをすることになりました!
みなさまどしどしお申し込みください!




2018.8.9 聞きたいことたくさん


先月末、京都新聞に藤井千鶴子のインタビューが掲載されました。

2018.7.26 光そへたる夕顔の花
(写真:「百萬」ひゃくまんより) な、なんとまたもやおよそ一ヶ月ぶりの更新となってしまいました・・。
え、まあ確かにちょっと忙しかったのはあるんですけど、できなくはなかったんです。ただまたこのPCが。

それよりこの一ヶ月は災難続きでした・・。
なにより暑い!!!!!
もうはっきり言って京都39度、40度近い灼熱気候でした。
明日から少しやわらぐらしいですが、ん?少しやわらいで35度ですが、とにかくもう生きていられない暑さでした。
5分と外にいられない日が続いて、エアコンの効いた部屋から出られない毎日でした。
天気予報で大阪の36度が涼しく見えるんですよ・・
しかしそれでも毎日避難所で不安と猛暑にさいなまれている方のことを考えるとまだ楽なものです。
ニュースを見るたび辛いですね・・。

でも今日は前の宣言通り明るい話題を!(◍•ᴗ•◍)ゝ
こういう時だからこそ笑顔になれるような話、がんばります!
といってもお知らせくらいしかないんだ・・

ことしも夏の浴衣会岡山のルネスホール8月19日(日)行います!
内輪の会ですのでどなたでもお気軽に見学に来てください!
涼しげなお菓子も出ますよ~(y^ω^y)小さいお子様大歓迎ですよ!
みなさん春からの成果をじゅうぶん発揮されると思いますので楽しみです。
 
ちょっとでもを感じていただきたいので夕顔の題にしました。
光源氏が喧噪の中で垣根にふと目にした涼しげな白い夕顔の花
どうか辛さの中にある人に届きますように。。

2018.6.21 お見舞
なんとおよそ一ヶ月ぶりの更新となってしまいした!申し訳ありません・・。

それよりも先日の地震!!びっくりしました。
みなさまご無事でしたでしょうか?

特に大阪にお住いの皆様は今たいへんな状況の方もいらっしゃるとうかがいました。一日も早く平穏な日常が戻ることを願っております。
お弟子さん方の中にも大阪におられる方は、人は大丈夫でも家の中がぐちゃぐちゃとか、ガスがこないといった状態だそうで、
不便、また余震が不安ということもあるでしょうが、とにかくがあってこそですから、それだけは。

私はというと、寝ておりました。今まで感じた中で一番大きい揺れだったので驚いて飛び起きました。あわてふためきました・・。
以来、家の中では防災意識が高まっています。母は箪笥が怖いといって寝る方向を変えていました。
私は道を歩くときは特にブロック塀を気にしながら、頭上注意で歩いています。

やはり両親は阪神淡路大震災を思い出して、あらゆることが脳裏に蘇るようです。
地震はどうしたって起こると思いますが、が失われるたびに理不尽さを感じずにはいられません。(合掌)

さて、次はきっと明るい話題にしますね!近々更新します!

2018.5.24 千年の翠 手に満てり
葵の上の話題に続いて今日は高砂について少し書いてみようと思います!

能の高砂は知らなくても、結婚式などでその名を見聞きしたことがあるという方は多いのではないでしょうか。相撲部屋の名前にもありますよね。

古くは「相生」とも呼ばれていたこの曲、古今和歌集の序文に、「高砂、住吉の松も相生ひのやうにおぼへ」とあるのに端を発しています。古今和歌集が紀貫之を中心として編纂され、初の勅撰和歌集として撰進されたことは学校で習われたでしょうか。
それは元号が延喜の時代、ちょうど醍醐天皇の御代のことでした。

歌人達は、高砂や住吉の松が、自分と共に、互いに成長してきたような年をとってきたようなものとしてに詠みこんだのです。それが相生の松なのです。
実際に例えば909番の歌に 
  たれをかもしる人にせん高砂の
             もむかしの友ならなくに     などが挙げられます。

しかし、だんだん後の時代になっていくと、共に年をとるのは歌人と松ではなくて、高砂の松と住吉の松同士だというふうに捉えられるようになります。
さらに相生の松というのは、一本の木から二つの枝が伸びている、いわばその双子のような状態を指すのだという考えが生じました。

ところがこれだとおかしいですよね。
だって高砂と住吉は離れたところにあるのに、一本の松から生えるなんてムリじゃないですか。能「高砂」においてその疑問を呈するのはワキである阿蘇神社の神主です。この人は実際に延喜の時代に存在した人のようです。

その疑問に答えたのは高砂の浦にやってきた不思議な老夫婦。なんとこの夫婦、おばあさんは高砂の人だけど、おじいさんは住吉の人だって言うんです、ビックリ!
さては遠距離恋愛か・・・
相生ひ → 相老ひの夫婦なんだそうです。

では相生の松とは?
その答えが次の部分。

  高砂といふは上代の、万葉集のいにしへの義
   住吉と申すは、今この御代に住み給ふ延喜の御事
  松とは尽きぬ言の葉の、栄えは古今あひ同じと、御代を崇むる例へなり

なるほど、松は千年も変わらずを保つものだから、高砂の松は歌で言えば万葉集、住吉の松は古今集のように、二つで共に今の帝の御代の安寧を祝っている、という認識なのですね、ふんふん。

さて、ちょっとややこしい話でしたがこれがあの世阿弥の時代の頃の古今集理解と申し上げて良いでしょう。ほんのわずかな序文の言葉からえらいことになりましたが、例の老夫婦は高砂と住吉の松の精霊だと正体を明かし、さらに神主一行に住吉で待っててね、と言い残して消えます。

ここまでが前半。長いようですが退屈はしないと思います。

後半は場所が住吉に移って、住吉明神が出てきて颯爽と舞います
(説明まで颯爽となりましたが)

  とにかくめでたいのじゃ╰(*´︶`*)╯

2018.5.23 陰陽師
という、映画がありましたね。
狂言師の野村萬斎さんが安倍晴明を演じておられる映画です。
この映画の中で、人に取り憑いたアヤカシの姿が、晴明にだけ見えている、みたいな場面がいくつかありました。

実は能「葵上」にも、これと同じような仕掛けがあります。

病床の葵上の側で、梓の巫女が葵上に取り憑いた怨霊の正体を暴こう呪文を唱えます。
するとシテ、つまり六条御息所の生霊ですね、が現れます。
しかし先ほどの晴明のように、この生霊の姿は巫女にしか見えていないのです。同じ場にいるはずの左大臣家の家来達にも見えていません。

なぜそれがわかるのかって?
それは当日の解説をお聞き下さい・・・

もちろん大丈夫、みなさまには生霊がちゃんと見えるはずです!

2018.5.22 駐車違反
みなさまいかがお過ごしでしょうか。
近ごろは暖かかったり寒かったりいろいろですね。

さて、今日はいよいよ今週末に迫ってまいりました「第34回 岡山能楽入門鑑賞会」の特集!ズバリ「葵上」を取り上げようと思います。

「葵上」は源氏物語の主人公、光源氏の正妻葵上愛人の六条御息所の確執を描いた曲!
これだけでもう結構おもしろそうですよね。数ある能の中でも抜群の上演頻度を誇っています。さすが六条御息所だわ・・・

とはいえ見たことないわという方もいらっしゃると思います。その方のためにも敢えておもしろい所はあまり言わないでおこう・・( ̄ー ̄)ニヤ...

ところで、六条御息所がなぜ葵上をそうまで恨むのかといえば、それはある事件がきっかけでした。
今でも5月15日に行われる賀茂祭り、いわゆる葵祭りの前日、新しく賀茂の斎院となる人が禊ぎ(みそぎ)をします。その行列に加わることとなった光源氏の晴れ姿をひと目見ようと、たくさんの人が華やかに装って見物に出ました。
なんせ超カッコイイ男なわけですから彼は。

葵上は当初しんどくて、それは妊娠中でしたから、見物に行くつもりはなかったのですが、彼女に使える女房達は見たくて我慢ならない。女主人を促してとうとう見物に出かけます。しかし、あれこれしていたので出遅れたんですね。着いたときにはもう駐車スペースがなかったのです。

それでどうしたか。
既に停まっていた他の車をどけはじめたのです。左大臣家の権力はんぱないです。

権力にものを言わせてスペースを横どりしたまではよかったのですが、その標的となった車の中に、お忍びで来ていた六条御息所の車があったんです。ヤバイ!

葵上方と御息所方の下人たちは互いに争い、ついに御息所の車は下人たちに後ろの方へ追いやられてしまいました。
しかもその争いのせいでお忍びで来ていたのに周りの人たちに六条御息所が来ていたことが露見してしまいました。
六条御息所も光源氏が見たかったんだー、とみんなに思われてしまった・・。
実は彼女と光源氏との仲は最近冷めてきてしまっていたんです・・

やってきた行列の光源氏も葵上の車には礼をしたものの、御息所には気づかないまま、通り過ぎて行ってしまいました。正妻と愛人の格差ですね・・・

それでも光源氏の晴れ姿をちょっとでも見たいな、と思った御息所の光源氏への想い素通りされた悔しさ

これが世に言う「車争い」です。

この事件が、前東宮妃(さきのとうぐうひ)、つまり前の皇太子妃であった御息所の矜持を踏みにじることになりました。

源氏物語のこの部分を前提にして、能「葵上」はその後を描いていきます

絶対おもしろいです (^▽^)/


2018.5.10 恥ずかしい・・(と言いつつも)   子どもしんぶん.pdf へのリンク


先月29日子ども新聞に掲載されました。これは1面。2面もそのうち載せます!!

2018.5.10 ひとたび放てば
みなさまご無沙汰してしまいました!!
されど言い訳させてくださりませ・・ホームページの作成ソフトが最近すこぶるご機嫌斜めなのです(汗)
それによって更新したいときにできないという・・しかも私以外ホームページのことを気にかけている人間がおりませんもので・・対策にも時間を割けず、という有様で今日に至りました・・ご容赦ください

というわけで今日は先日、5月4日春之大会のご報告です!
前日からお天気が心配で、当日はちょっと風があって時折雨も降りました。
しかし気温としては暑すぎず寒すぎず、少なくとも舞台の上はちょうどよい感じだったようです。
「熊野(ゆや)」の村雨留(むらさめどめ)の時、本当に雨が降ってきたので、違和感なく「のうのう、俄に村雨のして花の散り候はいかに」と謡えました。雨がパラパラと降るとそれもまた風情があっていいですね。

今回、特に舞囃子を見聞きしていて思ったのですが、謡とお囃子のリズムと体の動きが一体になっているとき、あるいは絶妙なズレを生じたとき、なんとも言えない心地になりました。ああ、いいなあと。

能、と聞くと、大抵の方は、えっ、難しそう、とか、近寄り難いとか敬遠されてしまうのですが、いったんハマると実はよくわかる楽しいものなんです。そしてそれは実はプロの本格的な能の公演だけでなく、こういった素人会でもじゅうぶんに味わえるもの、感じられるものなんじゃないかと思います。
小さな子供、学生、働いてる方や主婦の方、老後の楽しみというお年寄りまで、誰でもいつでも始められるのが能です。自分もできるんじゃないか、自分の子供にもさせられるんじゃないか、そういう思いがみなさんの内にあるなら、それをひとたび外に放ってみるとよいのではないでしょうか。

2018.4.21 はい、みなさん手を合わせてください 
14日岡山シンフォニーホールの中にある和風ホールをお借りして、5月の入門鑑賞会ワークショップを行いました!

京都でのワークショップに勇気づけられて、岡山でもやってみようということになりました。
来て下さった方々と様々な型をやってみたり(写真1枚目)、「高砂」「葵上」の謡の一部分を謡いました。一緒に謡うことができてとても良かったと言っていただきました。(本当はもっとたくさんの方に体験感想をお聞きしてみたかったのですが・・)
というのも、私がその場にあまりいられなかったからなんです・・!
2枚目の写真のとおり、着付けのモデルになって、それが終わってから着替えてましたものですから・・(*´σー`*)エッヘヘ(2000人の中から選ばれたねん ← ウソウソ)

今回は「葵上」から、鬼の姿になってみました。最後に面をつけると「おお~」と声があがりました。やっぱり般若の迫力ってすごいものですね。着付けを前を山畑美雪先生、後ろを兄にしてもらいました。ワークショップのいいところは、こういった普段では見ることのない楽屋での様子を知ることができること、また能の会よりも気楽な気持ヾ(o´∀`o)ノ♪参加できることにあると思いました。
(鬘(かずら)を櫛で梳かしながら、この髪は抜けたらもう生えてこないとか、ツライ)
私も鬼になって嬉しかったものですから、ちょっと父を脅かしてやりました。(☼ Д ☼)うがあっ!

これからも継続してできるといいなと考えています。この和風ホールも今回初めて使わせていただきましたが、とても良い会場でした。こういう催しにうってつけですね。足拍子もよく響きました。

次の日の山陽新聞にも掲載されました。またお読み下さいませ~

2018.4.1 面だらけのおもてなし 
みなさまごきげんいかがでしょうか。今日から新年度ですね。
でもなんだか私はまだ明日の月曜日から気持を切り替えたくて今日はのんびりしていました。

先日、滋賀県信楽にあるMIHO MUSEUMへ家族で行ってきました。
で行ったんですが岡崎の辺りはもう満開に近いくらいで、平日でもたくさんの人でした。
おそらく昨日今日の土日はもっとすごい賑わいだったのではと思います。

さて、博物館では現在「猿楽と面(さるがくとおもて)と題して数多くの面が展示されています。奈良の天河神社をはじめ、あらゆる神社・博物館所有の貴重な、そしてユニークなものが集結していました。時代も室町後期から江戸と幅広く、世阿弥の息子・観世十郎元雅が奉納した面など有名なものも見ることができて、たいへん勉強になりました。

ひごろから舞台で目にする面を思い浮かべながら見ていると、そこに至るまでの先人の試行錯誤があったことに気づきました。時折、こういう顔の人どこかで見たことあるなあ、などとその写実性にドキッとさせられることもありました。

博物館そのものもめずらしく、インスタ映えを求めてか、外国の方も含めお客さんは多かったです。

2018.3.28 をこきまぜて
みなさまこんにちは!
このごろの暖かさのせいで、京都のはもうすっかり盛りを迎えています。

3月18日(日)に京都の河村能舞台にて、春之大会が行われました。
京都で母が会を始めてから30年の記念でした!
たくさんのお客様に来ていただけて、嬉しかったです。٩(๑❛ᴗ❛๑)۶

一つ一つ、会やその他のことに取り組んでいると、いつのまにか一年が過ぎて
いるような気がします。

30年前
といえば私はまだこの世に存在していないのですが・・(。・Д・)わお
30年の間に、お弟子さん方もずいぶん変わったなあと思います。
大学のサークルで始めた人が社会人になって舞囃子を舞ったり、子供のころ一緒に楽屋を走り回った人がもう一度舞台に復活して長刀を振っていたり・・
全然変わってない方もいらっしゃいますが・・。
お弟子さん方に共通しているのは、みなさんお能が好きになっていくということ。
やるからにはやっぱり、楽しくなくちゃな、と思います。

そうそう、先日の悪だくみこと紅白饅頭も美味しかったし、お茶席でちゃっかりお菓子もいただいてしまいました。岡山の大手饅頭をお出ししたのに続いて、別のお菓子も用意しておりました。

(。◕ ∀ ◕。)食べちゃった・・

今回は素謡で「卒都婆小町」と「藤戸」が出ました。いずれも大曲です。
「藤戸」は第一回能楽鑑賞会で祖母が演じた曲です。聞いているだけでもやっぱり名曲でした。

ではまた近いうちに更新いたします!

2018.3.7 げに恐ろしきは・・


 ハーックション!( >д<).;'花粉の季節でございます。
 みなさん!今日は岡山での初めての能のワークショップのお知らせです!!

 しかしその前に!イチロー選手の所属先が決まりそうですね!それもなんとマリナーズ(*'∀'人)今年は何本打ってくれるんでしょうか
 
 さてさて、話を元に戻します。
 チラシにもありますように、4月14日にシンフォニーホールの一室をお借りして、能のワークショップをすることになりました。
 前回は京都で淡交会のプレ公演として行いました。今回も、五月の後楽園での鑑賞会のプレ公演という位置づけです。
 五月は「高砂」と「葵上」の能がありますが、ワークショップはこのうちの「葵上」の方を主に取り上げたいと考えています。
 
 申し込み方法は前回と同様です。このチラシの裏に記入してFAXしてください。もちろん電話やメールでも大丈夫です。
 むろん飛び込みでも参加可能です。どしどしご連絡ください!(
≧ω≦)



2018.2.27 いざ花見へ
2月も末になり、やっと少し春らしい空気(風?)になってきた気がします。
今年の冬は特別寒かったですね~~!
ストーブをつけた部屋以外は家の中が冷蔵庫みたいで、毎日こたつで震えてました。

さて、来月18日(日)には例年どおり春の大会があります!
今年は藤々会が京都で会を始めてからちょうど30年にあたります。
そこで先日からちょっと悪だくみ(◕ω◕)うふふ

それにしても30年かあ~ あ、ちょうど平成と同じなんですね、いま気づいた・・。
トップページにも載せましたが、お囃子素謡仕舞に、大曲や人気曲がたくさん出ます。
ちょっとずつ紹介していけたらいいなと思っていますが・・できるかな、あんまり期待せずお待ち下さい。


2018.2.24 新しい花
みなさまお久しぶりです!
更新がしばらく滞ってしまいまして、失礼いたしました。
さっそく最近のニュースをお届けしようと思います!

先日、2月17日(土)京都観世会館にて、淡交会第一回京都公演が行われました。初めてのことで、この日までにたくさんの困難がありましたが、多くの方々お力添えにより、無事に開催できました。

お客様も、寒い時期ですし少ないかとずいぶん心配したのですが、観世会館が満員に近いほど来て下さいました。(人◕ω◕)
本当にみなさま、ありがとうございました
私は上演時間以外はたいていロビーにいました。お能を見るのが初めてとか、名古屋からのお客様かなと思う人もちらほらいたので、能を見る人の裾野を広げるお手伝いができたのではないかと嬉しい気持ちでいます。

曲目の「清経」「安達原」も、特に初めて能を見る方にとって非常に優れた選曲であったかと思います。解説を聞いて、より能の世界を深く味わっていただきたいです。

とにもかくにも、無事に終わって家族一同ホッとしております。(^ ^;)
次の舞台に向けてまた努力していきたいと思います。

2018.1.21 試みのワークショップ
みなさま2週間ぶりです(^ ^)
昨日河村能舞台で「のぞいてみよう能」と題して、ワークショップを開催いたしました!!

初めての試みでどうなることやらとちょっと不安もありましたが、観世芳伸先生にもたいへんご尽力をいただきまして、お客様にはご満足いただけたようです。(^o^)ほっ

まず仕舞「高砂」を三木成弘先生、「羽衣」を山畑美雪先生に舞っていただき、続いてY・Y先生による「安達原(あだちがはら)」の解説がありました(「安達原」は2月17日の淡交会で山崎芙紗子がシテをいたします。)。途中、(わくかせわ)という糸車を回すのを実演してみたり(1枚目の写真ですね)もしました。間近に見られる機会はあまりないと思いますし、来られた方にはとても新鮮だったらしく、好評でした。

でも一番もの珍しかったのはやっぱり装束付けだと思います(2枚目の写真)(髪の毛)をつけたり、唐織を着せたりするのは、ベテランがやると簡単そ~に見えるんですが、やってみるとこれがまた難しいんです。
私もモデル要員として日頃から練習台にされてるんですが、やり始めたころなんか兄はひどくてですねえ、いっつも・・(ハゲにされたこともあったわ (/ω\) Oh my God!・・カミよ)

昨日は上手くいってました。すごかったです、あっという間にできてました。
むずかしいんだなあ~うん。

型の練習もおもしろかったです(3枚目の写真)
まず泣く型の「シオリ」。みんなでシクシク泣いたあとは、「ユウケン」。喜びや悲しみなど、自分の気持ちの感情を表す、大事な型です。写真はこのユウケンのシーンです。最後は「ウチアワセ」。両手を左右に広げて胸の前で合わせる型です。
芳伸先生はとてもお話がおもしろくて、みなさんつられて楽しそうでした。
謡の一節も謡ってみました。ちょっと難しい節のところもあったけど、声を出したり体を動かしたりするのはいいですねο(*´˘`*)ο

能を見ていて、あれは何をしているんだろうって思ったことがある方も多いと思います。
型はわかりやすいものから抽象度の高いものまであります。泣く動作である「シオリ」なんかは比較的わかりやすいし、すぐできるからご自宅でもやってみてください。(^o^)/

そうそう、今回は能面や能衣装の展示も行いました。やっぱり間近に能面を見ることは結構な刺激だったのか、すごく興奮されてるお客様もいらっしゃいました。話し出すと止まらないくらい、能面はおもしろいです、本当に。

今回のワークショップ、全体的にはなんとかまとまっていて無事に終わってほっとしています。最後の仕舞「清経」(山崎浩之)と「安達原」(芳伸先生)も素敵だったと言っていただきました。ぜひ2月17日の本番観世会館に見に来ていただきたいです。

それではまた舞台でお会いしましょう!!(*´ω`*)

2018.1.7 初詣 

みなさま、あけましておめでとうございます!(^ ^)
本年もどうぞよろしくお願いいたします!


お正月はどのように過ごされましたか?

ウチは今年は岡山と京都に二分しました。
私は修士論文で年末年始大わらわでした・・・(^ ^;)つかれちゃった笑

それで昨日、初詣に行ってまいりました。
毎年、近所の下鴨神社か岡山の吉備津神社なんですが、今年は父の実家のある西宮の西宮神社に行って来ました。十日戎で開門と同時にダッシュするあの神社です。よくニュースで流れますよね。

その準備で境内は建設現場さながらでした。
の側のお店で甘酒をいただいて、ほっこりしました。いい気分転換ができました٩(๑❛ᴗ❛๑ )

祖父と祖母
に挨拶するのも夏休み以来になってしまいました。
二人とも阪急ブレーブスのファンだったなあ・・。折しも星野元監督の訃報を聞いて、なんだか込み上げてくるものがありました。

今年も無病息災で過ごせたらいいですね。
みなさまにとって良い年でありますように!!

2017.12.25 クリスマスプレゼント


 年明けまで次の更新はないと思っておりましたが!
 みなさまにクリスマスプレゼントがございました!!(人◕ω◕)

 来年2月17日(土)淡交会プレ公演1月20日(土)河村能舞台で行われます!
 
 初めての取り組みで試行錯誤しているところで実態がどうなるやらわかりませんが、体験コーナーもある予定です!

 めったにない機会だと思います!!
 
 実際に舞を舞ってみたり、間近で能を見たりするチャンスです、みなさまどしどしおいでくださいませ (*´ω`*) 飛び入りも大歓迎です

2017.12.12 母と謡えば

12月10日(日)浦田定期能恙なく行われました。

例年12月はお客様が多くて混みますが、先日は例年にもましてたくさんのお客様が来てくださり、本当ににぎやかで楽しい会になったと思います。(*´ω`*)

浦田定期シテをするのはこれで最後(本当に長い間お世話になりました)、と銘打っておいたからか、家族友人・知人を何人も連れた方が多く、また見ていると学生もちらほらいたような気がして、お客さんの層が豊かでおもしろかったです(でもみなさん、一つだけお願いです。「Mちゃん、大きくなったわねえ~」の前に、できれば名乗ってくださると大変ありがたく・・)

海士(あま)クツロギ(舞の途中で橋掛かりに行く特殊演出)16年前の秋の「たのしむ会」に後楽園で一度やっていて、その時は母がシテで私が子方だったのですが、不思議なことに二人とも全然記憶になくビデオを観て「ああ確かに私やわ・・」などと呑気なことを言い合いました。
海士の子方はも多くて結構大役だと思うんだけどなあ・・笑

なにはともあれお母さんそのまたお母さん、お疲れさまでした。

あっ、そういえばお兄さんもいましたっけね、お疲れさまでした~。

来年も良い年にしましょう!!

は来年も解説のようです!
お能をより楽しんでいただくために頑張ってください~聞きに行きます。

来年は2月17日淡交会京都公演がございます!→「催しのご案内」をご覧ください。
こちらもたくさんのご来場をお待ち申し上げております!ヾ(*´∀`*)

そうそう、来年はいくつかワークショップもする予定です。
一番近いので1月です。また決まったらお知らせします!

それでは皆様、良いお年をおむかえください!

2017.11.19 母の一念と共に去らん



差し迫ってきました、次回浦田定期能12月10日(日)今年最後の定期能です。そして前にもお知らせしましたが山崎芙紗子にとって浦田定期能最後のシテとなります。
寒い折
に恐縮ですが、どうぞみなさまお誘い合わせの上、ご来場賜りますようお願い申し上げます
そしてなにより、楽しい一時をお過ごしください。

2017.11.18 眼を閉じて 入り日を拝むよ
さて、今日は後回しになっていた10月7日(土)岡山後楽園で能を楽しむ会のお話をしようと思います。

まず「弱法師(よろぼし)」。この曲は世阿弥の息子・元雅が作った曲です。私もこれまで二回くらいは見たことがあったんですが、この間の会ではそれまで感じたことのないほど、これは心を表現した、非常に繊細な曲なのだなあと感じました。

弱法師は他人の讒言(いわれのない中傷)のせいで父親に追い出され、乞食同然の身となってしまいました。
そして彼は盲目に、つまり目が見えなくなってしまったんですね。
だからをつきながらゆっくりと橋掛りを歩いて来るわけです。
そして天王寺、大阪のあの有名な天王寺の石の鳥居までやってきて、そこで杖をコツンと柱に当てて、ああここが天王寺の石の鳥居なのだと知ることになります。
ちょうど左の写真の場面です。

 浅ましや前世に誰をか厭ひけん 今また人の讒言により 不孝の罪に沈む故 思ひの涙かき曇り 盲目とさへなり果てて 生をもかへぬ この世より 中有の道に迷ふなり ・・・ 今も末世と云ひながら さすが名に負ふこの寺の 仏法最初の天王寺の石の鳥居ここなれや 立ち寄りて拝まん いざ立ち寄りて拝まん

それから境内に咲く梅の花の匂いに気づき、またその花びらが彼の袖に散りかかって・・

  難波津に 咲くやこの花 冬ごもり 今は春べと 咲くやこの花

この歌は古今和歌集の仮名序にみえる歌ですが、弱法師はこの歌をちゃんと知っているのです。「この花」という言葉がここでは重要です。盲目でも雅な、やさしい気持を失わない、そういう人なのですね。

 ワキ(実は弱法師の父)「おう これなる籬(まがき)の梅の花が 弱法師が袖に散りかかるぞとよ」
 シテ「うたてやな難波津の春ならば ただこの花とこそ仰せあるべきに 今は春べも半ばぞかし 梅花を折って頭に挿しはさまざ      れども二月の雪は衣に落つ あら面白の花の匂ひやな げにこの花を袖に受くれば 花もさながら施行ぞとよ

乞食が食べ物をめぐんでもらう、それがこんな美しい言葉で表現されていることになんだか救われるような気がします。
とても好きなシーンです。

寺の縁起を語り、やがて日想観(じっそうかん)を拝み候へと言われた弱法師。

 げにげに日想観の時節なるべし 盲目なればそなたとばかり 心あてなる日に向ひて 東門を拝み南無阿弥陀仏 ・・・ 極楽の東門に 向ふ難波の西の海 入り日の影も舞ふとかや ・・・ 詠(なが)めしは月影の いまは入り日や落ちかかるらん 日想観なれば 曇りも波の 淡路絵島須磨明石 紀の海までも見えたり見えたり 満目青山は心にあり おう見るぞとよ 見るぞとよ

実際に目で見ることができなくても、彼にはちゃんと見えているんだと思います。

私たちにも、見えていても見えていないことがあるのではないでしょうか。

2017.11.17  秋の風もろともに
すっかり更新するのが遅くなりました!
11月4日(土)
後楽園能舞台で行われた藤々会秋之大会のご報告です。

気持ちの良い秋晴れで、お客様が午前中からたくさん来てくださいました!!
毎年のことなので、よくご存知の方もいらっしゃって、お弁当お抹茶を満喫しながら、に聞き入っておられました。ο(*´˘`*)ο

舞囃子が五番あり、中でも自然居士は難しそうで、いつか自分もやってみたいなと思いました。
不思議なことですが、人がやっているのを見ると、自分もあれがやりたいな、なんて思えてくるものらしいですね。今回も、会が終わってから今度はあの曲がやりたいという方がちらほらいらっしゃいました。

夕方には秋の風が少し冷たく、舞台正面の障子を閉め切ってしまいましたが、少し開けておくと、お囃子の音に惹かれて、観光客の方達でしょうか、なんだなんだとぞろぞろと入って来られました。
笛や鼓の音に惹かれてなんて、なんだかでいいなあと思いました。

能舞台は普段は非公開ですから、観光客の方にとってはラッキーだったことでしょう。
最後の番外仕舞で兄が「(とおる)」をしたのですが、ここからこられた方が、え、もう終わりなのと残念そうに言われたのを、惜しくも嬉しくも思いました。

そうそう、今回は久しぶりに履き物トラブルがありました。着物で来られた方が帰ろうとなさって、自分の履き物の袋に草履ではなく女物のが入っていたのです。おそらく取り違えた人がいるのだろうと会員も捜したのですが見つからず、会が終わったあとに母がアナウンスしたところ、間違えていたことに気づかれた方がいらっしゃって、無事に元の持ち主のところに履き物が戻りました。
よかった、よかった。( ๑❛ᴗ❛๑)۶♡٩(๑❛ᴗ❛๑ )
みなさまも今後は十分お気をつけ下さいませ。

それでも座布団を片づけていると、「楽しませてもらいました、ありがとう」と感謝の言葉をかけていただき、大変励みになりました。嬉しい(人◕ω◕)

来年も無事行えるよう、日々精進して参ります!
お楽しみに!!ヽ(*´∇`)ノ

2017.11.2 舞台に宝の花が降る
 
 ・・・三保の松原で、漁師はこの世のものとも思えないほど美しい衣を見つけました。
   家宝にしようと思って持ち帰ろうとすると、一人の天女に呼び止められました。

   天女が衣をなくして天に帰れない泣くので、かわいそうになって衣を返してあげることにしました。
   そして衣を返すと天女は嬉しそうに舞いはじめました。
   ああ、きれいだなあ。
   天女は国土にキラキラ宝を降らしながら、天に昇っていきました。ありがとう
   
   
 あさって11月4日(土)岡山後楽園にて藤々会秋之大会が開催されます。
 舞台にはきっと様々な咲き乱れ(乱れたらいけないな、咲き誇りが正しいかな)、みなさまを楽しませ、そして驚かせてくれることと思います。
 
 おてんばでちょっとうっかりな天女さん、良いお天気になりますように、祈ってくださいな。

2017.10.23 にも負けずにも負けず
 昨日は台風で大変でした。特に夜中は、寝ていると凄まじい風の音がして、それもいつもの台風より音が激しい気がしました。しかし昨日は秋の会だったので疲れていて、すぐ寝てしまいました。起きたら玄関脇の塀の瓦一枚落ちていたのにはびっくりしました。あんなのを見たのは初めてです。

 昨日の会は、お弟子さん方にもお客様にも早めに帰っていただけるようにと宴会を中止にしたのですが、それでも電車が遅れたりバスが満員だったりと、帰宅がだいぶ遅くなる人もいたようです。本当に大荒れでした。

 しかしお天気とうってかわって、舞台は全然荒れませんでした
それどころかみなさんとてもお稽古十分できているといった感じで、見ていて楽しかったです。
 (*´∀`*)
 負けてられへんな、と思いました。(*・ω・)

 今回は独吟に挑戦なさった方もたくさんいらっしゃいました。独吟は京都の会ではあまり出ないのですが、祖母は独吟は力がつくからいい、と常々言っています。母も独吟はいい方法だった、と申していましたので、これからも継続して聴けるかもしれません。

 来年は京都の藤々会発足して30年の記念の年ということもあり、3月18日春之大会では舞囃子7番ある予定です。素謡もまだ決まっていませんが、どなたかお披きをなさるかもしれません。またわかり次第トップページを更新いたします。
 来年は今回秋の会でした曲を舞囃子の形で完成させるという方も多いですので、そういう意味でもさらなるレベルアップが見られておもしろいのではないかと期待に胸膨らませております。
 たくさんの方に見に来ていただけたらなと思います。
 
 そういえば、お茶席で出た長五郎餅は好評でした。私もちゃっかりいただきました・・・。(*´ω`*)

 でも個人的な話をすると、花筺(はながたみ)のクセはめちゃくちゃ難しかった岡山11月4日の会でも同じ曲に挑戦しますが、昨日よりうまくできるようにしよう。李夫人武帝・・・あれ本当に高級だわ・・。
 
 そうそう、久々に近所に住んでいる小学校のときの同級生に案内を送ったのですが、悪天候にも関わらず見に来てくれて、すっごく嬉しかったです。小学校一、二年生のときの担任の先生で、いつも見に来て下さる大好きな先生も来てくださっていて、先生も久しぶりに彼女と会えて嬉しそうにしていらっしゃいました。縁が続くってなんだか暖かいことですね。

 悪天候が予想されていたので、今回はずいぶんお客さんが少ないのではとみんなで心配していたのですがその割には来て下さっていて正直ホッとしました。

 そうだ、もう一つ思い出しました。今回、足が悪くて正座がちょっと、という方に、低いイスを用意して、高い見台(謡本を乗せているアレです)でしてもらったらうまくいきました。あれは良いアイデアでした!

 来年もまたがんばります!!٩(๑❛ᴗ❛๑)۶

 (→写真:上から「船弁慶」、(素謡)「楊貴妃」、「融」、「兼平」)
 

2017.10.19 さあ本番だ!

(上:仕舞「熊坂」・下:仕舞「野宮」)
 
 最近急に寒くなってきましたね。衣替えをしたり、毛布を出したり慌ただしいです。
 こう急激に変化されると身体がついていけません。皆様も風邪をお召しになりませんよう、くれぐれもお気を付けください。

 そんなことを言っている間に秋の会が迫ってまいりました。10月22日(日)です。

 期日前投票はもうお済みですか?私は前日行くつもりです。
投票率の低さが常に話題になりますが、日本が軍事国家だった時代、選挙だの民主主義だの権利がなかった時代を知っている人は、必ず投票に行くとおっしゃいますね。そうそう、日本人は税金がどう使われているかに関心が薄いらしいです。政治に興味があってもなくても、税金はちゃんと徴収されてるんですからおもしろいものです(とか言いながら私はまだ学生なので)。

 舞台のことに話を戻しましょう。

秋の会は春の会に比べてお囃子はありませんが、今回は仕舞がとても多いです。そのうえ独吟(一人で謡う)をなさる方がたくさんいらっしゃるので楽しみです。独吟はそう長くはありませんが、まったく舞台の上に一人でいるというのは緊張感もあるでしょうし、さらに非常に気持ちが良いものだと思います。

 プログラムの初めの方は、京都学園大学の学生さんたちが大活躍してくださると思います!

 華やかな女性陣の舞や謡に負けず、男性の方も力強く実力を発揮してくださると思います。

 とても楽しみです。(*´ω`*)

 当日は台風の影響か、が心配されます。ご来場の皆様はお足元に十分ご注意の上、おこしくださいますよう。

 入場無料です。午後3時まで、お茶席(無料)がございます。

 それでは当日、河村能舞台でお会いいたしましょう。

2017.10.8 心を澄まして
昨日、岡山後楽園能舞台にて、「岡山後楽園で能をたのしむ会」が開催されました!!

今日は簡単にそのご報告をしようと思います。
能談義については後日(さ来週以降)ぼちぼち書きたいと思います。

今回もたくさんの方々にご来場いただき、そして毎回アンケートで「初めて」の方がいらっしゃるのですが、そういう方にもご満足いただけたようで、藤々会一同、誠に嬉しいかぎりです。(๑˃̵ᴗ˂̵) و

お客さまの数に対してトイレの数が少ないことや、椅子席でない所などにいつも不平不満を言われる方もいるのですが、演能の最中はみなさまが舞台にとても集中なさっていることが伝わってきて、それが一層舞台をよりよいものにする大きな助けになっていたと思います。╰(*´︶`*)╯

高齢化の進む社会で、どんなイベント施設も改良が加えられる中、この後楽園の観客席はそういう点で完全に遅れをとっています。もし私がみなさまの立場でしたら、不満たらたらかもしれません。それでもなんとか客席を苦慮して作りますと、みなさまがご自身で工夫なさって心地よく楽しんでおられるので、ほっといたします。

みなさまのためにも、より充実した舞台になるよう、努力せねばなりませんね。

それではまた後日

(休憩時間の一コマ)

2017.9.24 大変と言いながら  

(2年くらい前の岡山の秋の大会。連吟です。後楽園にて)
 なんだか最近少しまた暑さが戻ってきたような気がしますが、朝晩はひんやりと気持がいいですね。

 家族で会の話をしていると、10月7日、10月22日、11月4日のどれの話なのかごっちゃになってくることがあります。申合せ(リハ)の日程やお弁当の、先生方・お弟子さんへの諸連絡など、本当にややこしく、家族内でも意思疎通が重要なことが多いです。
 もちろんすっごく嬉しいことですが、やっぱり大変手が六本くらい欲しい(笑)。
番組を折る手、券を切る手、手紙を書く手、宛名書きする手、郵送する手、電話をかける手、メールを出す手・・・六本でも足りひんなあ・・・。
 
 それというのも小さい大きいに関わらず、祖母(藤井千鶴子)が会が好きだというのが原因なのです。いつも母にあきれられて、「大変とか言ってるけど自分のせいでしょ」なんて言われては苦い顔をしながら笑っているのが常です。
 
  生き甲斐、なんだね。

 というわけで、今日はこれを機会に、ちょっと年間スケジュール(今年)を少し早いですが振り返りつつ、これからの会に備えようと思います。

 2月 第1週目ころ   初会(岡山 ルネスホール)
 3月 春分のころ    春の大会(京都 河村能舞台)
 5月 連休のころ    春の大会(岡山 後楽園)

 5月 第3土曜    後楽園入門鑑賞会
 8月 第1週目ころ   浴衣会(岡山 ロッツビル)
 9月 第1週目ころ   浦田定期能   山崎浩之 「杜若」シテ 
 10月7日(土)    能を楽しむ会
 10月22日(日)     秋の大会(京都 河村能舞台)
 11月4日(土)      秋の大会(岡山 後楽園)

 12月10日(日)     浦田定期能   山崎芙紗子 「海士」シテ 浩之「通小町」ツレ
 

2017.9.18 舞台で会いましょう


台風が通り過ぎて、少し暑さが戻ってきましたね。
今日は10月22日(日)河村能舞台であります秋の藤々会のお知らせです!!

能の会も楽しいですが、こういう素人会というのはまた格別な魅力があります。
今回はお囃子はありませんが、独吟(一人で謡う)仕舞がたくさんあって、バラエティ豊かだと思います。
たくさん見ていると、能の表現にいろいろな疑問も出てくるかもしれません。綺麗だなとか、かっこいいなと思う曲もあるかもしれません。
よくご覧になるという方も、初めてだという方も、常に何か発見がある、新しいことに出会える、そういう会にしたいと思います。

謡曲を楽しむのは一般の人の教養でもあり楽しい集まりの場でもあります。
声を出し、謡を覚え、舞を舞う、これらは結構頭を使います。
認知症予防、なんて冗談でおっしゃる方もいますが、案外当たっていると私は思います。

例年はお弁当だけですが今回はお茶席もありますのでどうぞそちらも楽しんでいってくださいませ!!(無料です)

2017.9.10 然れば当寺を御建立あって
 残暑の厳しい毎日ですが、みなさまいかがお過ごしでしょうか。

私、先日友人とあべのハルカスに行って来ました!
 
 当初の目的は16階の美術館で開催されていた「奈良 西大寺展」を見にいくことでした。
 西大寺の釈迦如来立像清涼寺の像を模刻した貴重なものでした!

 そしてせっかくなのでと60階の展望台にも行ってきました。
 エレベーターを降りて大きな窓に近づくとあまりの高さになんだかふらふらしてしまって、慣れるまでに時間がかかりました。ちょっと足元がすくみました
 
 でもお天気が良くて、眺望は本当に最高でした!
 特にご覧のように、四天王寺の伽藍配置がはっきりわかりました!
 なんというわかりやすさ・・
 
 フロアをぐるっと一周しながら、空港や港や山が見えて楽しかったです。ああ、謡の言葉は本当なんだ、昔はあの辺までで、そしてこの四天王寺が一番目立つ高い建物だったんだろうと、そんなことを友人と言い合ったあと、カフェで互いに愚痴をこぼし合いました。
 友人は以前は夜に来たと言っていました。夜景も綺麗なんでしょうね。誰と来たんだか・・

 10月7日の楽しむ会で能「弱法師」があります。四天王寺が舞台ですので、詞章を少し書いておきます。

  住吉の松の隙より眺むれば 月落ちかかる淡路島山 
   と詠(なが)めしは月影の いまは入り日や落ちかかるらん 
日想観(じっそうかん)なれば 曇りも波の淡路 絵島 須磨 明石 
 紀の海までも見えたり見えたり  満目青山(ばんぼくせいざん)心にあり 

2017.9.4 を見る
 9月2日(土)に、京都観世会館にて今年三回目の浦田定期能が開催されました!

 能は「頼政」「杜若」、素謡「野宮」がありました。
 
 実は私、「頼政」は初めて観ました。とはいっても、能って何度目でも初めてに思えるから不思議なんですが。そして初めて観て、やはり頼政は難しい曲だなあと思いました。
 床几(イス)に座ったまま戦いの有様を語ったり、辞世の和歌を詠んで自害する様子を再現するところなど、みどころも多いうえに、そうしたことを「頼政らしく」見せるということは本当に実力のいることだと感じました。

 山崎浩之がシテをさせていただきました「杜若」は、恋之舞という小書(こがき:特殊演出)のものは何度か観たことがありましたが、普通のバージョンをちゃんと観たのは久しぶりだったかもしれません。橋掛りを八橋に、松を杜若の花にみなして、旅僧のもとにやってくるシテの姿は雰囲気がありました。
 やはり杜若は初冠(ういこうぶり)をつけているあの姿がなんとも美しいですね。シテが動くたびに追懸(おいかけ)から白い横顔ほの見える有様が、雅びな業平にピッタリでした。何度観てもいい曲です。

 それに今回は、いつにもましてお客様の舞台に対する集中度がすごかったと思います。客席が一丸となって舞台を見守っているような、そんな心地よい空間ができていました。
 たくさんの方に観ていただけて、本当に幸せだなと思いました。こういう日があるから、しんどいことも頑張れるのかな。
 観客と舞台とが、お互いに一つの場所作り出すような、そういう会を目指している・・のかな。

 秋風の気持ちいい、忘れられない一日になりました。

2017.8.29 この楽しみのために 



さあ、今年もたのしむ会の季節がやってまいりました!といってもまだちょっと先ですが・・
 
今年は「弱法師(よろぼし)」と「船弁慶(ふなべんけい)」の能二番と、狂言「寝音曲(ねおんぎょく)」です。

 どちらもおもしろい曲で、見どころを話し出すと尽きません

 弱法師は、今の大阪府にある四天王寺が舞台です(私もあべのハルカスが出来たばかりのころ、友達と行ったことがあります)。目が見えない青年が主人公で、だからといっては違うのかもしれないけれど、本当の目以外の目というか、心で感じるところの多い曲です。盲目ゆえの敏感さはっとする瞬間、そういったものを非常に繊細に描いていると思います。自分で書いていてよくわからない説明だなと思いますが、当日Y・Y先生解説がございますので、ご心配には及びません(ハードル上げたよごめんね)。

 また、弱法師はを持っているのですが、この扱いが実は簡単そうに見えて難しいのです。のです、といってもこれは難しい曲なので、私はまだやったことがありません。先日、大阪の大槻能楽堂で狂言の「川上(かわかみ)」というのを見ました。これも盲目の男性が主人公なのですが、野村万作さん(有名な野村萬斎さんのお父様ですね)は、杖をつくのは易しそうに見えて実は結構むつかしい、とおっしゃっておられました。
 何にでも言えることですが、ごく自然に、本当に盲目の人が杖をついているようにお客さんに見えるまでには相当練習が必要なのでしょう。

 船弁慶は、もはや言うまでもないほどおもしろい曲です。前半は静御前が義経との別れを惜しむ場面が中心で、烏帽子をつけた白拍子の姿で舞うクセ舞はとても美しく聞いていて飽きません。愛する人との別れに泣く静御前の姿はまるで絵のように綺麗です。
 そして一転して後半は、舟の上の義経一行に平知盛をはじめとした平家一門の亡霊が襲いかかります。あれよあれよという間にが荒くなって、そしていよいよ亡霊が出てくる、その時は舞台のボルテージが最高潮に達します!さらに亡霊が襲い来る中、弁慶は必死に数珠を揉み、船頭は舟を漕ぎ・・・もうこれ以上は実際に舞台を見ていただくのが確かかと思います。

 それでは皆様会場でお会いするのを楽しみにいたしております!!╰(*´︶`*)╯

2017.8.22 たまには違う所で 
 みなみなさま、先日藤々会の夏の歌仙会(浴衣会)が行われました!!

 今回の会場は、いつもお稽古場として使っているロッツビル八階の部屋の向かい側にある、黒住教の本部のお部屋をお借りしました。


 歌仙会の会場は毎年のように変わりますが、今回は特にや、和の雰囲気が居心地良かったです。やっぱり畳はいいなあ・・

 今回はお休みの方が多くて少し残念でしたが、例年より独吟(一人で謡うこと)が多くて楽しかったです。短いし、一人だから聞く方も集中して聞けますよね。
 無本に挑戦した方もいらっしゃいました。すごいなあ(・∀・)

 私はというと、少し仕舞の地謡をお手伝いしたのと、女郎花(おみなめし)の仕舞をしました。あ、あと百萬の子方ピンチヒッターもしました(謡なら大人でも問題なくできます)

 じっとみなさんの謡いを聞いていますと、その曲の有様というか展開が頭に浮かんで来るようでした。能を知っている人ならそれも簡単かもしれませんが、知らない人でもやはりなんとなく想像できたのではないでしょうか。それぐらい劇的な曲もあれば、言葉の美しさと音楽の美しさに酔いしれる、そういう曲もありました。

 また来年も楽しみにしたいです!!( ´∀`)b
 

2017.8.15 世阿弥が見た空に
 みなさま、三連休はどのようにお過ごしでしたか?
 
 私は奈良に行って参りました。奈良の大学に四年通っていただけあって、奈良の名所・旧跡はだいぶ見たつもりでいましたが、今回は!

 能を大成した観阿弥・世阿弥父子を輩出した観世座発祥の地・結崎と、その世阿弥が出家してのち修行した場所・補厳寺(ふがんじ)に行って参りました。
 
 空から面が降ってきたという伝説が残る場所が、現在の結崎面塚公園で、そこにたくさんの石碑が建てられていました。
 
 補厳寺は、説明板によると室町時代に建てられてた曹洞宗の禅寺で、江戸時代になって藤堂高虎が再興したということでした。
 
 今は山門だけしか残っていませんが、側に「世阿弥参学之地」の碑があり、ここで世阿弥が出家したことに不思議な感覚を覚えました。
 本当に世阿弥という人がいたんだな、と。
 なんだかワキ僧になったような気分で、ここに怪しげな里人でも現れたなら、もう能「世阿弥」が出来てしまうかもしれない。いや、私の頭の中ではすでに・・。

 みなさまもどこか名所・旧跡を訪れられる際には、ワキ僧の気分になって新曲の構想を膨らませてみてはいかがでしょう!!
 
 ちょっと楽しいかも!?
(´。✪ω✪。`)

2017.8.3 平家、源氏、伊勢 古典文学そろい踏み!!


 みなさま、不安定なお天気が続く毎日ですが、お元気でお過ごしでしょうか。
 
 今年も浦田定期能のお知らせです。
 9月2日(土)、このたびは兄・浩之「杜若(かきつばた)のお能をさせていただきます。
 伊勢物語のお話をもとにした、美しい曲です。
 
 他にも、能「頼政」は平家物語に、素謡「野宮」は源氏物語にもとづいた、まさに今回は古典文学目白押しのラインナップと言えます。
 解説は・・山崎福之先生にお譲りして(笑)・・と。
 
 ここでみなさまに残念なお知らせがございます。
 これまで長い間、浦田家にたいへんお世話になり、浦田定期能で能をする機会をいただき、また多くのみなさまに支えてきていただきましたが、浦田定期能でお能をするのは、おそらく今年で最後になると思います。
 詳しく事情を申し上げることはまだできませんが、今まで応援してくださいましたみなさまには、これまでと変わらずお能を楽しんでいただけるよう、藤々会として一層努力してまいりたいと思っております。
 
 岡山の舞台はこれまでと変わらず続けてまいりたいと思います。
 
 また、今年の12月10日(日)の浦田定期能には山崎芙紗子能「海士(あま)のシテをいたします
 最後ではありますが、それにふさわしい珠玉の一曲です。たくさんの方に見ていただければ幸いでございます。
 


2017.7.18 その時 弁慶が動いた
 16日の日曜日に、名古屋で「関西観世花の会」がありました。
 母(山崎芙紗子)と祖母(藤井千鶴子)も出演するので、観客荷物持ちとして父と私も行って参りました!
 写真は名古屋能楽堂のロビーで橋弁慶のからくり人形にカメラを向ける私です。
 このからくり人形午前11時になると動く仕掛けになってまして、おもしろかったです。みなさまも名古屋にいらしたらぜひ。

 この日は少し早く来たので時間に余裕がありました。名古屋の能楽の歴史をちょっと仕入れることができて嬉しかったです。
 父は母と結婚したばかりのころ、熱田神宮の能楽殿で祖母が砧のツレをしたときのことを思い出していました(37?年くらい前の話?)
 
 徳川幕府が倒れ、戦争があり、能は幾多の困難な時を経て今にいたっているのだなあと思いました。
 続けてくださった方々ひとりひとりのおかげですね。

 そうだ、肝心の能のことを書くんだったのに。
曲は「巻絹(まきぎぬ)」と「藤戸(ふじと)」でした。
どちらも良い曲です。特に藤戸はあらためて良い曲、そして難しい曲だと感じました(おわり!?)。

2017.7.17 身をよじるほどの恋は・・
 暑いですね~というか蒸し暑い
冷房のきいた部屋から外へ出たときの、むう~とした空気が本当にイヤですね
 更新がだいぶ久しぶりになってしまいました。ネタがたまってます・・。
あれやこれやと日々のことに追われるうちに、京都はもう祇園祭真っ最中です。ひええ。。

 今日はちょっと趣向を変えて・・・この写真、これなんでしょう??
おわかりでしょうか。先日、庭に咲いていたと言って母がオシャレなコップにいけていました。

そう、これは「しのぶもぢずり」です。

有名な伊勢物語最初の段に登場する和歌であり、古今和歌集にも採られた恋の歌です。

 陸奥の しのぶもぢずり 誰ゆゑに 
           乱れそめにし われならなくに

(陸奥で織られる)「しのぶもぢずり」の摺り衣のように、あなた以外の誰かのせいで心が乱れ始めてしまった私ではないのに(あなたのせいですよ)。

 あ~もう!身がよじれるほどあっつい~~!!

 みなさまもどうぞ健康にはお気をつけくださいね。

2017.6.26 思い出  


 ようやく梅雨の季節がやってきたような毎日ですね。みなさまいかがお過ごしでしょうか。

 今日はもう3週間くらい前になりますが京都の平安神宮毎年6月(近年は1日と2日に決まっています)に開催されている薪能について書いてみたいと思います。

 まずは私が生まれる前のこと。
 私は誕生日が6月4日なのですが、その私がもうすぐ生まれるというころ、一番上の兄が足を骨折しました。結果的には体育の授業でサッカーをしていてヒビが入っていたのですが、当の本人は平気な顔をして薪能会場で走り回っていたそうです。それがそのあと痛いと言い出して、病院に行ってわかったそうです。6月の頭にその骨折騒動があって、そのせいでビックリして少し早く生まれたのだ、と、両親にとっては忘れられない大変な時期だったようです。
実に兄らしい、、山崎家の笑い話の一つです。

 走り回っていた、と書きましたが、昔の薪能の会場は、現在のようにパイプ椅子を並べるスタイル(写真をご覧下さい)ではなく、板敷きの上に毛氈があると言えばいいのか、かなり適当でした。みんな適当に足を伸ばしたりあぐらをかいたり、座布団とかを持ってきてこう・・おにぎりを食べながら観ていました。
 だから子供が走り回れたんですね。
かくいう私もその子供の一人でした。大人達がてんで気ままに座っている間を、縫うようにしてはしゃいで走った日が、もうとっても遠いです。

 それから今のやり方になって、まだそんなに経っていないのにずいぶん前のことのような気がします。
今では外国人のお客さんも増え、英語で場内アナウンスがされるようにもなりました。
今年からは「ナビ狂言」なる取り組みもなさってました。

2017.6.14 名にし負う銀座
みなさまいかがお過ごしでしょうか?
梅雨と言いながら一向に雨が降りませんが・・。

今日は、話が前後してしまうのですが、ゴールデンウィークに東京・銀座に新しくできた、観世能楽堂についてお話したいと思います。

5月4日の岡山の会が終わったあと、いったん京都に帰ってから東京へ母や兄と行って来ました。この観世能楽堂の完成記念公演はもう4月に終わっていたのですが、その追加公演がありまして、しかも観世芳伸先生道成寺をなさるということでこぞって観に行くことになったという次第です。

銀座!いや、GINZA!? (◦○◦)かの有名な銀座・・・
 わかっていただけるかわかりませんが、とにかく私は銀座という場所へ行くのはこれが人生初だったわけで、
  こここ、これが銀座なのか・・・
と思いながら、歩行者天国を歩いていると、「GINZA SIX」という建物の角に、紋付袴の男性(目立つというのか浮いてるというのか)が立て看板を持って立っていたので「ああここだ」とすぐにわかりました。その建物の地下四階に能楽堂が新しくできたのです。
 写真のとおり、縦長の空間でした。一番いい席で観させていただけて、とても充実した舞台でした。道成寺は何度観てもドキドキする曲です。特に鐘入りのところはやはりすごい迫力でした。

  ドドオオーーーーンンンッッッ!!!と鐘が落ちました。

 みなさまもそれが目的でも何かのついででも、街中の能舞台に足を運んでみてください。誰にとっても、能がより身近なものになっていったらいいですね。

2017.6.12 眠い・・ 
 最近暑さが落ち着いてきて過ごしやすい気温になってきましたね。まだ梅雨が始まったばかりなのにみたいなコメントですが。

 こういい風が吹いているとねむ~くなってくる・・・(-ω-)zzz・・・
はっ (◦○◦)!!
大丈夫、寝たりしてません・・してま・・(-ω-)zzzz

 というわけで今日は舞台の上でグースカ寝ていた青年・廬生が主人公の邯鄲についてです。
 彼は人生に悩んで、名のある人を訪ねて旅をしていたんですが、途中で泊まった宿で、不思議な枕で寝ることになります。夢の中で彼は栄華を極めます。帝の勅使が来て帝の位を譲ると言うのです。帝の位を譲る!?さらに豪華な宮殿で舞って、サマになってきたところで・・バシバシ!と叩き起こされます。

  かくて時過ぎ頃去れば 
 五十年の栄華も尽きて真は夢の中なれば 
  みな消え消えと失せ果てて 
 ありつる邯鄲の 枕の上に 眠りの夢は 覚めにけり


 
いいところだったのに・・起きてみるとそこには宿の女主人が。
もしかしてぜんぶ夢だったのか・・・呆然とする廬生。
 五十年の栄華一睡(炊)の夢だったことを知り、人生の意味を悟ります。
 
 さばかり多かりし 女御更衣の声と聞きしは
   松風の音となり
 宮殿楼閣は
   ただ邯鄲の仮の宿 
 栄華の程は
   五十年
 さて夢の間は粟飯の一炊の間なり

 
 
私もこんな枕で寝てみたいなあ~王位なんていらないからそうですね、とりあえず一ヶ月温泉!とかいいなあ。ダメですね、全然人生悟れてない。
 
次の岡山の会は10月7日の楽しむ会ですね
曲はたしか「弱法師」と「船弁慶」。どちらもいい曲です
その前に夏の歌仙会でしょ、浦田定期能でしょ・・京都の素人会もあるわ・・う~ん嬉しいけど大変!

 それではみなさんも良い夢を・・o(_ _)ozzZZ・・

(空降りの型。柱をつかんで片足立ちで頭を振ります)

2017.5.29 お母さんは捜し続ける
 27日土曜日に、「岡山能楽入門鑑賞会」が催されました!

数年前からアンケートを実施しているのですが、いつも「初めて」来られた方がたくさんおられるので驚きつつも嬉しく思っております。
アンケートの内容についてはそのうちまた書こうと思います。

 今日は「百萬(ひゃくまん)」について。
やっぱりいい曲ですね
なんといっても筋がわかりやすい!

行方不明の我が子を捜す母の物語。舞台は嵯峨の清涼寺大念仏に集まった群衆の前で曲舞を舞い、我が子を捜し、ついにめぐり会う・・・。
簡単な筋で普遍的なテーマですから、誰でも共感しやすいですし、初めて能をご覧になる方にも、もってこいなのでは!

  これほど多き人の中に などや我が子のなきやらん
 あら我が子恋しや 我が子賜べなう 南無釈迦牟尼仏と

 
 曲が終わったあと、最後のお客さんの拍手が、すごく自然だなと感じました。嵯峨の大念仏に集まった群衆だって、きっと同じことをしたんじゃないでしょうか。

 「会えて良かったね。これからはずっと一緒にね」

2017.5.26 珠玉の芸術


いよいよ明日になりました、「岡山能楽入門鑑賞会」!!(^o^)/
毎年お客様に支えられて5月の第4土曜に開催いたしております。本当にありがとうございます

いつもみなさんのご期待に添えられるよう、藤々会の会員のみなさまをはじめ、多くの方の力を借りてこうしてお能ができることを、
とても幸せなことだと感じています。

さて、明日の能は「百萬」と「邯鄲」です。

百萬は、奈良からはるばる都へ我が子を捜しにやって来たが主人公です。嵯峨の大念仏に集まった群衆の前で、母は曲舞を舞い、ついに我が子とめぐりあう、感動的であると共に、また実におもしろみのある曲です。
世阿弥の父・観阿弥は、奈良に実在した女曲舞・百万から曲舞を習ったといい、このことが後の能に大きな影響を与えました。
嵯峨の清涼寺に行くと、この百萬の能に関する興味深いものが展示されていたはずです。

邯鄲は、とても難しい曲、しかしそれだけに飽きるところのない人気曲です。
子方も大活躍ですし、なんといっても見せ場は狭い一畳台の上で「楽(がく)を舞うところでしょう。
そうそう、みなさんは青年・廬生のように眠ってしまわないでくださいね~

能を初めてご覧になるという方でもきっと楽しいのではないかと思います。
夢ではなくても夢のような時間を過ごしていただければ幸いです。

そうだ忘れてました、明日は会場でお弁当を五百円で販売しております(早いもの順です)。

それから会場はトイレが少ないですので、能が始まる前などにはたいへん混雑いたします。
時間に余裕をもって行動してくださいますよう重ねてお願い申し上げます。

また、演能中に携帯電話の着信音などが鳴りますと周りのお客様のご迷惑となりますので、
・・ってそのくらい言われなくても先刻ご承知ですよね。失礼いたしました。

ではでは!明日、楽しみましょう!!d(^ ^)b

2017.5.21 ところ変われば 
 昨日、久しぶりに(去年の正倉院展以来か)奈良に行って来ました。

奈良のいいところは、「変わらない」ところです。もちろん細かいところはちょこちょこ変わるんだけど、雰囲気は同じなんですよね。言葉にしにくい・・でもすごく懐かしい感じがします。

鹿たちはあいかわらず食べ物を持った人間には愛想が良いし。。

毎年5月の第三(土・日)に春日大社と興福寺で薪能が開催されています。「薪御能(たきぎおのう)」で検索すると詳しく出てきます。
私は今回初めて行ったんですが、やっぱり実際に行って見るのが一番ですね。なるほど京都の平安神宮での薪能とはまた全然違っていました。正面の高くなった場所にイスが置いてあって、お客さんはみな適当に座ってました。

私もそこに交じって能「杜若」「弱法師」、狂言「附子(ぶす)」を見ました。
午前中には春日大社の若宮拝舎にて能「花月」も見ました。
観世流だけでなく、金春流宝生流のお能も興味深く見させていただきました。

薪能はやはり特別な舞台で、夜が更けて行くにつれてお客さんの集中力が高まっていくのがわかっていいですね。

もうすぐ京都の薪能もあります。こちらは日が決まっていまして、毎年6月1日2日です。そちらも楽しみです!!

2017.5.15 めぐってきた春
ご報告がすっかり遅くなりました
京都では葵祭がありました。

5月4日、岡山後楽園能舞台で藤々会春の大会が行われました!!
右の通り盛会でございました!
ご来場くださいましたみなさま、本当に本当にありがとうございました。

風もちょうど良く吹いてくれて、気温も高すぎず、けっこうなお天気で良かったです。(^ ^)

大勢のお客様の前で、広いところで大きな声を出すのは気持ちの良いもので、私も思いっきり舞えました。みなさんに見ていただけて嬉しいかぎりです!

藤々会ではお弁当が無料でもらえて、お茶席でおいしいお菓子も食べられるということでいらっしゃるお客様もおられるみたいですね
より楽しく、より快適に会を見てほしいがために続けています。
どうかこれからも応援のほど、よろしくお願いいたします!!

聞くところによると、お弟子さん方はもう次の会に向けて曲を決め、準備を始めておられるようです。
すごいガッツ!


さて、今月27日(土)に能楽入門鑑賞会が行われます。
こちらも盛会となりますよう、一丸となって舞台を作りあげたいと思います。

みなさんもどうぞ観客として、舞台を存分に堪能していただきたいと思います。
そして曲が終わりましたらどうぞ拍手でもって、舞台の上の人たちに応えてくだされば嬉しゅうございます

おそらく私はカメラ席でせっせと写真を撮っていると思います。
みなさまとお会いできるのを楽しみにしております。

)
(上:素謡「鞍馬天狗」下:仕舞「箙(えびら)」)

2017.5.2 五月の風に乗って


藤々会春之大会が、いよいよあさって5月4日に迫ってまいりました!!(^ ^)

上は去年の写真なんですが、覚えておられるでしょうか、とても風が強い一日でした。
風が強いと何が困るか?

まず目にゴミが入って痛いですね。
それから髪が乱れてうっとうしいです。
ついでにスカートもめくれて落ち着きません。帽子も飛びます。
そして舞台の上では!
謡本のページがめくれてしまいます・・・(^ ^;)これがなかなかやっかいなんですよね。

そういうわけで、去年は晴れてくれて良かったとはいいながら、風に悩まされました。
今年は雷神さま風神さまともに、休養していただきたいものです・・・。

2017.4.26 誰にも故郷がある 
先日、岡山に帰っておりました。
もうすぐ春の大会がありますので、ちょくちょく帰っていたのですが、先日は申合せのために帰省しました。

申合せというのはその名のとおり、申し合わせるということで、つまりリハーサルのことです。
能や、舞囃子には必ずこれがあって、お囃子の先生方に来ていただいて行います。

初めて舞囃子をしたとき、その申合せで笛がわからなくなって、ウロウロと迷子になったことを覚えています。
見所(=客席)で聞くお囃子の音と、舞台の上のそれとは全然違うものです。
慣れてくれば楽しいものですが・・

どれだけ稽古しても、やっぱり本番というものは何が起こるかわからない、怖いものです。
それを考えると、申合せの重要性がいつも身にしみます。

ん??タイトルの故郷は何かって?
いや別に深い意味はなくて、単に吉備津駅について山を見たら・・ああ故郷だなあって思っただけなのでした。


2017.4.22 暗闇に光を
 

 みなさまお久しぶりです。
もう一ヶ月も前の会のことを、あらためて振り返る時間がやっととれました!

 私がしたのは舞囃子「三輪(みわ)」。三輪のことは以前にも奈良シリーズでふれたかと思いますので今日は神楽(かぐら)について主に書いてみたいと思います。

 神楽の舞は笛が難しくて、覚えるのに一苦労いたします。
お能ではこの神楽があるのは「巻絹」「龍田」「三輪」の3曲しかありません。(そしておそらくこの順で難しいようです)

 私の場合は初めてしたお能が「巻絹」でしたので、神楽はだいぶ慣れていたつもりなのですが、やはりどれほど「完璧」を追究しても尽きることのない舞だということがよくわかりました。
 神楽の舞の中で最も重要なのが「沈み」です。載せました写真がそれをしているところです。文字通り体を沈めていますよね。でもこれがものすごく難しくって・・う~ん、いつも祖母の言うようにうまくできないんです・・。

 さて、ここでちょっと三輪の詞章を載せてみましょう。

   まづは岩戸のその始め 隠れし神を出(いだ)さんとて 
 八百万(やおよろづ)の神遊(かみあそび) これぞ神楽の始めなる

そう、ご存じ「天の岩戸」のお話ですね。

天照大神が天の岩戸にお隠れになって、天地は暗闇になってしまい、神々は困り果てました。そこで天の岩戸の前でアメノウズメノミコトが「神楽」を舞いました。その騒ぎにつられて天照大神は岩戸を少し開きます・・

 詞章の続きはこうです。

       天の岩戸を引き立てて 神は跡なく入りたまへば 
    常闇の世とはやなりぬ 八百万の神達 岩戸の前にてこれを嘆き 神楽を奏して舞ひたまへば
  天照大神その時に岩戸を 少し開きたまへば また常闇の雲晴れて 日月光り輝けば 人の面しろじろと見ゆる

 天照大神が岩戸から出てきたので、天地に再び光がもどったのでした。
 
なんといいましょうか、暗いニュースも多い世の中で、舞台を見てくださった方が少し心に明るいものを感じてくださったらとても嬉しいなと思いました。

2017.3.27 人は集う その舞台に


 みなさま、おまちかねのお知らせです!今年の岡山能楽入門鑑賞会の曲は「百萬」と「邯鄲」でございます。
 
百萬は奈良からはるばると京の都まで子を探しにやってきた母が、清凉寺(嵯峨釈迦堂)大念仏の行われている中で我が子にめぐり合うお話です。邯鄲はみなさんもよくご存じの、眠っている間に五十年の栄華を極めるお話です。

百萬は名曲でして、謡曲を習っている方であれば百萬の名文を知らない人はいないほどです。またそれほど愛されてきた曲です。
邯鄲は難曲でございます。そして全体を通して音楽色の強い曲です。一畳台の上で舞う(がく)は、演者にとって大変困難を伴うものです。(狭いから自分がどっちを向いているのかだんだんわからなくなるそうです)
どちらも実に劇的であり、見どころ満載なのです。

ぜひこの機会にご覧くださいますようお願いいたします。m( _ _ )m
詳しくは催しのご案内をご覧ください。

2017.3.22 松風 颯々(さつさつ)の声ぞ楽しむ
 先日、無事に藤々会春之大会河村能舞台で開催されました!
たくさんの方にご来場たまわりまして、本当にありがとうございました。当日の舞台の内容はさておき(さておき!?)、今日はそのあとの宴会の話を先にしてしまおうと思います。

 今回も新しいお店を開拓しまして、お弟子さんが勧めてくださった、四条烏丸の「輝庭」に行ってまいりました!
5つのテーブルに分かれて、大いに盛り上がりました。・・・舞台以外の話で。
でもやっぱり楽しいのは舞台がうまくいったからなのであって、あそこ失敗したな~とかくよくよ考えてたらお酒がまずくなるものなんです。そういうわけでみなさん、思う存分ビールを飲むために舞台、がんばりましょう!!

 そうそう、会が終わったらいつも思うことがあるんです。
会の最中は自分の出番のことで頭がいっぱいですし、地謡に出ていたとかお昼ご飯食べていたとか、もろもろの理由で他の人のを見るチャンスがあまりありません。いつ見ているかといえば、あとからお弟子さん方に当日撮影したビデオをお送りするので、その時あらためて再生しつつ、ちゃんと拝見しています。もちろん謡もぼちぼち聞いております。
 
 ですからみなさんに当日には言えないし、私が言うのもなんか偉そうに聞こえはしないかと思うから黙っているのですけど、みなさん本当に上手になってます。どこがどうというのは人それぞれですが、「足の運びがうまくなったな」とか「すごく落ち着いて舞ってはる」とか「拍子のタイミングばっちり」とか様々思いました。

 曲によって、また個人によって設定されていたハードルは違っていたのでしょうが、とにかくいろんな方法でそれを超えていかれたのではないでしょうか。

 お能っておそらく世間一般には、まだまだ敷居が高いと感じてらっしゃる方が多いと思いますが、そんなことない、というか・・・お能ってこんなに楽しめちゃうものなんだぞってみなさんが教えてくださってるような気がするので、私はビデオ拝見していていつもとても嬉しいです。見ている方にもそれが伝われば、もっともっと嬉しいです。

 さて、忘れないうちに書いておきます。来年の春之大会は3月18日(日)です。来年は京都藤々会30周年記念の年ですので、何か大きな曲があるのかもしれませんがまだ未定です。

 来年もどうぞお楽しみに。

 ごめんなさい、まだありました。
 5月4日(木・みどりの日)に岡山後楽園にて春之大会
がございます。さらに5月27日(土)には入門鑑賞会があり、「百萬(ひゃくまん)」と「邯鄲(かんたん)のお能がございますのでこちらもぜひいらしてください。どちらも名曲・大曲です。

2017.3.16 藤々と謡えば
もはや3月も半ばになりました。日が経つのは本当に早いですね。
そしてあさってが今年の第一回浦田定期能ということで、「東北」のシテをします、藤井千鶴子のお話を少しいたします。
もちろん、曲の詳しい解説・聞きどころY・Y先生お譲りするわけです。

前にも申し上げたかもしれませんが、藤井千鶴子が能楽師の資格を得たのは25歳のとき。ちょうど今の私くらいです。そのとき私の母は2歳くらいでした。お弟子さんは地元の子供達が多かったと聞いています。
それから60年・・・。今では「藤々会」として岡山と京都で素人会を年に二回ずつ、岡山では小さい会をさらに二つと、玄人会を二回主催しています。

なんだか私にはよくわからないですが、とにかく並の努力で出来ていることではないんだな、と思います。
本人はあまり言わないんですが、よく考えたら凄いなと。
もちろん一人の努力でここまでできるわけはありません。たくさんの方に支えられて、応援していただいてできること、しかもそれを続けていくことによってできることですから、本当に誇りに思っていいのではないでしょうか。
おそらく女性能楽師として、見えない苦労もたくさんしてきたと思います。
しんどいな、やめたいなとも思ったことでしょう。
それでも背中を押してくれる誰かがいて、舞台が終わった日には疲れ幸福感でいっぱいだったと思います。

年月が経って、能をすることはもうできなくなってしまったけど、祖母の中にある能のは、まったく衰えを知りません。

あさって、観世会館でまた美しい花を見せ、聞かせてくれることと思います。楽しみです。




2017.3.8 梅若丸よ永遠に
(木母寺の境内にあった絵馬。柳が植えられた塚の前で亡くなった子供のために母たちが念仏を唱える場面)


(梅の写真かと思いきやこれは「ふきのとう」です:百花園にて)
 みなさまいかがお過ごしでしょうか。
 私はおもいっきり花粉症で、マスク生活です。

 そんななかですが、先日東京に行って参りました。目的は二つ。
5月27日の入門鑑賞会で「百万(ひゃくまん)」があるため、母が観世芳伸先生の「百万」を見て勉強しようということ、それと兄のところに生まれた子供を見に行くということの二つです。
 梅若能楽学院で「百万」を観て、次の日は東京の名所めぐりをしました。なかなか行ける機会がないので今回はちょっと欲張ったかもしれず、少々疲れが出ているところです。
 
 さて、みなさまご存じのとおり有名な謡曲「隅田川」は、都からはるばる東国へ子供を探してやってきた母親が、隅田川のほとりで我が子の死を知り、塚の前で念仏を唱える・・というような筋の話です。
 その子供すなわち梅若丸の塚があるのが、梅若丸の梅の字を「木」と「母」に分けた名前の寺、木母寺(もくぼじ)です。
 東武伊勢崎線の鐘ヶ淵駅で降りて、川まで歩いて十分くらいの所にあります(いまでは「東武スカイツリーライン」とか呼ぶそうですが)。江戸時代から文人の訪ねる場所として有名であったらしく、著名人のが境内にたくさんあります。そして梅若丸の塚のそばには柳がありました。

 「隅田川」は親子ものの中でも悲劇に終わる曲です。まだ幼い子供をなくす母の心情。悲しいですが、このようにいつの世にも受け入れられる普遍的なテーマを持っている曲は、きっと永遠に人の心を打つのだと思います。

 さてさて、ちょっと暗いお話になってしまいましたので、最後に少し明るい話をいたしましょう。
 ええっと東京であと行ったのは・・村田春海の・・・いやいや失礼しました、百花園という所へ行きました。
「梅は百花に先がけて咲く」ことから梅がたくさん植えられています。どういう場所かって、それは検索でもして調べてください(急に文章が杜撰になってゆく)。いろいろな種類の梅が盛りを迎えていて、とてもいい雰囲気でした。ぜひみなさまもおいでください。
 ではまた。
 

2017.2.28 嵯峨の御寺まわらばまわれ
いよいよ2月も終わりですね。さて今日は春の曲をご紹介します。

謡曲「放下僧(ほうかぞう)」の小歌は人気の小段で、私も大好きです。謡っていると楽しい曲です。その詞章をここに少しあげてみます。

   面白の 花の都や  筆にかくとも及ばじ
  東には 祇園清水 落ちくる瀧の 音羽の嵐に地主の桜は散り散り
   西は 法輪 嵯峨の御寺まわらばまわれ 水車の 臨川堰の川波

いかがでしょうか、京都のがいまにも見えそうな良い謡いですね。

 ところでみなさん清水寺はご承知のとおりと思うのですが、法輪寺というのは今ではあまり認知度の高い方ではないかもしれません。
 
 実は先日、京都に遊びに来た友人と嵯峨嵐山へ行って来たんですが(来たる花粉の季節には外出を控えたいのである・・)、嵐山駅周辺がものすごい数観光客でにぎわう一方、渡月橋を渡って法輪寺の方へ行くと、写真のように人気がないのです。橋から嵐山を見ると、法輪寺の多宝塔(これがとってもきれいです)が見えて、「ああ、嵐山来たんだな~」と私は思ったのですけど、遠望だけしてみんな行かないようです(^ ^;)
 
 もしみなさんも嵐山に行かれる機会がありましたら法輪寺を眺めてこの謡いを思い出してみてください。ちょっとだけ楽しみが増すかもしれません。

 春になったら桜を見に来る人でいっぱいになって、すごい混雑なんでしょうが・・。

(刑事ドラマなどの撮影でよく出てくる法輪寺の階段。これを上がって正面が本堂、左手に多宝塔がある。)

2017.2.21 「恋のしぐさのいろいろ」 能楽と崑曲~日中伝統演劇の比較研究~


みなさまご機嫌いかがでしょうか。先日、金剛能楽堂にて国際京都学シンポジウム・「恋のしぐさのいろいろ」 能楽と崑曲~日中伝統演劇の比較研究~が行われました!!
このシンポジウムをするのに相当な苦労があったようですが、御覧のように多くのかたにご来場いただきまして、誠にありがとうございました!!

内容は、前述の通り、能は見どころ溢れる仕舞で「班女」「野宮」「井筒」を、崑曲は春たけなわの庭に戯れる恋する乙女を「牡丹亭還魂記」にて鮮やかにお届けしてくださいました。本当に美しくて引き込まれる内容でした。

第一部はそれぞれの型どころとその動作の表す意味を演じつつ比較しつつ説明し、第二部・第三部はそれぞれの演目を演じ、最後の第四部で先生方・演者の方がみなさまのアンケートからの質問にお答えするといったものでした。

(第二部・仕舞「班女」の「そよとのたよりも聞かで」の部分を説明)

さてさて真面目な文章はこのくらいにしまして、私自身の感想を申し述べることにしましょう。

私自身、今回のシンポジウムは本当に勉強になりました。
(お父さん、お母さん、疲れたとしきりに言ってるけど、娘はとても勉強になりましたよ!ありがとう)

崑曲でいえば歩き方も非常に独特で・・こうなんといいますか、マイケル・ジャクソンのムーンウォーク・・ではないのですがとにかく絶妙な感じでした。男女や、幽霊なんかでも少しずつちがった歩き方をするということでそれも実践してくださいました。しぐさの中では、部屋の扉を開けたり、庭に入ったりに乗ったり、男の人に会って恥ずかしそうに顔を隠したり、とにかく一つ一つ洗練された動きでした。長い袖を生かした優美で曲線的な動きが春らしさを自然に表現していました。

能の方も、いつもなんのことかわからずとにかくやっていた動作について、たくさん新発見がありました。「野宮」で「露うち払い、問はれし我もその人も」という詞章がありますが、当然、六条御息所であるシテが芝の露を払うしぐさをするのですがそれは本来、彼女を訪ねてきた光源氏の動作なのだということ。これはなるほどおもしろい!と思いました。
そして「班女」の「なお裏 表 あるものは人心なりけるぞや (あふぎ)とはそら言や あはでぞ恋はそふものを あはでぞ恋はそふものを」というところでは、扇の裏表人の心の裏表ということを、実際に扇をひっくり返して見つめる動作で表します。(「あふぎ」に恋人に「逢ふ」という言葉を掛けているというわけですね。)


仕舞(しまい)」というものについてもひとこと。

能を見る時にはいつもある面やきらびやかな装束に目がいきます。それも、曲の趣を解してこそより美しく見えるというものですが、こうした人の目をパッと引きつけるものがない仕舞では、型どころ、そうでないところ、動きの全てが赤裸々になります。詞章と型とが、他の何ものをも纏わずに表現されます。だからこそ言葉としぐさのあり方を深く考えることになります。

そうした意義を見出したということにおいても、魅力あるシンポジウムでした。これからも素直な気持ちで芸能に取り組めたらいいなと思いました。(おわり!)(0^o^0)/

2017.2.16 長寿社会




みなさまおはようございます!今日は3月4日(土)に開催されます、第七回たかつき市民能のお知らせです。
番組にもありますように能「鶴亀」のツレの山崎浩之がさせていただきます。

鶴亀は謡曲を習われている方だけでなく、一般的に親しみのある曲かと思います。
複雑な筋でもなく、(がく)にぎやかなお囃子もおもしろい、おめでたい曲です。どうぞお楽しみに!!

実は兄は11歳の時にもこのをやっております。その時わたしはまだ母のお腹の中にいましたので詳しく存じませんが、写真がありますのでこれも参考までに載せておきます。ただしこの時は子供なので直面(ひためん)ですが。頭の上に亀なんか乗せちゃって子どもみたい(子どもだよ)。
 え・・?この写真を見ての感想ですか?うーん、全然変わってないなあってことでしょうか・・


2017.2.13 薄氷を 砕くな 解(と)かすな


2月11日(土)に、今年の藤々会の新年会を岡山のルネスホールで行いました!!
今年は厳しい寒さと激しいの影響が心配でしたが、なんとか無事に終えることができました。

後楽園で華やかな会をするのも楽しみですが、こういうこじんまりとした内輪の会も(もちろんどなたでも来ていただけたら大歓迎です!)、ちょっとくつろいだ雰囲気があってなんともいえません。

みなさんコツコツと練習なさってるんだなあ~と、私は今回も綺麗な和菓子小鼓ならぬ舌鼓を打っておりました次第ですが。。(^o^)/

さてまた千代と続いてまいります藤々会、次回の発表会は京都の河村能舞台でございます!!
春之大会・3月20日(月・祝)ですので、お誘い合わせのうえぜひご来場ください!
(仕舞:氷室ひむろ)        

2017.1.21 喜びも悲しみも


 さて、今日は2月18日(土)金剛能楽堂で行われる、シンポジウムのお知らせでございます!
お能のお知らせではありませんが、山崎芙紗子、山崎浩之等、出演いたします!!

 国際京都学シンポジウム「恋のしぐさのいろいろ」と題しまして、日本の能楽と中国の崑曲(こんきょく)を、実際の上演を交えながら比較してみてあれやこれやと楽しもうと、おおまかに言えばそういうイベントです!!

 能楽って何?崑曲って何?という方も大丈夫、きっとおもしろいですよ。かくいう私も、崑曲についてはよく知りません。でもだからワクワクします。この企画、実は初めてではなく何回目かなんですが、そのたびに前とは違った試みをしているようです。

 実際に上演すると申し上げましたが、能を一曲まるまる上演したりするのではなく、今回は「仕舞」(一曲の中から5分程度切り取った小段を舞うもの)で何曲かご紹介することになると思われます。プログラムにもありますように、「班女」「松風」「野宮」などです。仕舞なので紋付き袴で面は着けません。つまり素顔で舞います。崑曲を上演してくださる方は本当の衣装を着けてなさるそうですから、楽しみですね!!

 崑曲は明代後期の16世紀に成立したとされる演劇で、世界無形文化遺産にも登録されています。演じられるのは明代の劇作家・湯顕祖の有名な「牡丹亭還魂記」の一部です。とても優美で乙女心MAXの場面だそうです(しっかり見ておかなくちゃ)

 最後には先生方・出演者が総合討論を行います。「恋のしぐさ」は実に奥が深いのですね・・!

 というわけで、今から非常に待ち遠しいです。

みなさんどうぞお誘い合わせの上、どしどしご来場くださいませ!!(^ o ^)/


2017.1.3 あけましておめでとうございます


新年、おめでとうございます!!(^ o ^)/
みなさま今年もどうぞよろしくお願いします!

岡山から帰って来ましたら千鶴子先生から年賀状が届いてました。今年のお能の写真はなんとでした。
「猩々乱」はおめでたい時にピッタリですから、良いですね
そんなわけでこれを新年のご挨拶にあててしまおうというこの杜撰な・・いやいや、臨機応変な対応になりました。

今年の演能ラインナップも合わせてお知らせできるのが手っ取り早い・・いやいや、嬉しいですね。
これも皆様の温かい応援・ご理解の上に成り立っていることです。
いまどき有難いことと思わねばなりません。あらためて厚く感謝申し上げます。

今年も充実した舞台をみなさんに観てもらえるよう、努力して参ります!!

2016.12.27 来年のを楽しみに ~ 浦田定期能 ~


 今年もあとわずかとなりました。更新が久しぶりになってしまいましたが、今日は来年の浦田定期能の年間番組を掲示します。
 来年もおもしろい曲ズラリと並びました!(^ ^)
 みなさま来年もどうぞ観世会館に足を運んでくださいますよう!

 よく個人的にはどんな曲がオススメかと訊ねられるんですが、もちろんどれも魅力的ですからどれも見てほしいなと思いつつ、やはり私はまだ見たことのない曲に強く興味があります。例えば「頼政(よりまさ)」は舞囃子や素謡ではたまにありますが難しそうですし、それだけにこれがお能だとどうなるのかなと想像が膨らみますね。あとは「海士(あま)」も人気曲で、「玉之段(たまのだん)」は特に有名ですよね。これも素謡では何度も子方をしましたがちゃんとお能を見たという記憶がないのでこの際しっかり見ておこうと思ってます。
 
 それぞれの曲についてはまた日が近づきましたらくわしく、みどころなどをご紹介しますので!!お楽しみに!


2016.11.24 雪のつもる日に
        
 今日は54年ぶりに都心に雪が降ったということで、の話題です。
 折よく来月十日の浦田定期能の演目が「鉢木」です。
 上のチラシを御覧いただいてもおわかりのように、直面(ひためん)の曲なのです。
 
 あらすじや曲の説明は次回のネタにとっておくこととしまして、これから本格的寒くなってくる時期です。 どうぞみなさまお体に気をつけてお過ごしください。


2016.10.25 傘さしながら
今日は父と二人で奈良国立博物館へ。久しぶりの奈良です。
今、ちょうど正倉院展を開催中でして、これを見に行くのが近年恒例になりつつあります。

 正倉院展が始まったのは1946年。終戦の次の年というのは驚きです。続けていくということは本当に大変なことなんですね。今回も貴重な宝物がたくさんありましたが、中でもおもしろいのはやはり文字が書いてあるものです。瓦、布、皿・・そして文書の数々。

 帰りに近鉄の駅へ向かう道すがら、興福寺を通ってちょっと猿沢の池へ。外来のを駆除し、すっきりとした池に、が縁飾りのようにユラユラと揺れていました。も降ってきました。

 わぎもこが  きぬかけやなぎ  みまくほり 
     池をめぐりぬ 傘さしながら                               (會津八一)
(興福寺のすぐそばの猿沢の池。ここで龍神が暴れたのか・・。)

2016.10.22 釈迦のすべてをあなたに。
(勢いよくジャンプ!!したところ。「猿沢の池の青波、蹴立て蹴立てて」の言葉どおり、臨場感たっぷりです)  みなさまこんばんはでございます。予想はしていましたが10月大変余裕がありません。しかしそれもとてもぜいたくな悩みです。皆様にまたお会いできる日を楽しみにお稽古する日々です。

 それはさておき昨日の地震!!21日の金曜日です。私、ちょうど祖母と後楽園でお稽古しておりましたらぐらぐらっと揺れまして、最初は大きく、それから小さく、しかしそれがずいぶん長いと感じました。十秒くらいあったでしょうか。あんなことは初めてでした。舞台の屋根が落ちてくるのではおろおろしました。また強い揺れがくるのかもしれません。みなさまもどうぞお気をつけてお過ごしください。

 さて、今日はまた先日の会のことをお知らせしようと思います。今回は「春日龍神」です。

 京都・栂尾(とがのお)明恵上人(みょうえしょうにん)が春日大社に参詣することになります。明恵上人はお釈迦様を慕うあまり、中国とインドに行きたくてしょうがないんです。「入唐渡天」の志のある、高僧です。
 
 その明恵上人が春日大社にお参りすると、一人の宮守が出てきて、上人の入唐渡天の話を聞いて、とんでもないダメダメやめてと言います(本当はもうちょっとちゃんと言います)。あなたはここの春日の神さまが頼りにされてる人なんだから、外国なんて行かれたら困るのだと。

 でも明恵上人だって行きたいのだから困りますよね。というわけで、「春日の神」→「釈迦(仏)」、「春日山」→「霊鷲山(りょうじゅせん:釈迦が説法した山)」として、釈迦の一生、即ち「摩耶の誕生」「伽邪の成道」「鷲峯の説法」「双林の入滅」をあなたにお見せしましょうと言って、宮守(正体はもちろん春日の神)は消えます。

 そして龍神が颯爽とあらわれて上人にその有様を見せます。時空を超えて、実に壮大なスケールでお届けするのです。

 最後、なんだか力が抜けてしまって雑ですがこんな感じです(本当にザツ)。
 
11月6日の会まであと二週間ほどです!
こちらにもどうぞおいでください!!  

2016.10.20 恋心は燃えに燃えて
 お久しぶりの更新となりました!今日は先日開催されました岡山後楽園で能を楽しむ会ご報告をしたいと思います。
 
 今回の演目は「班女」と「春日龍神」。まずは班女から。

 東海道・野上の宿(のがみのしゅく)の遊女だった花子が主人公です。彼女は都からやってきた吉田の少将と出会って恋に落ちます。しかし少将は東国へ行くことに。二人はまた逢う時の形見にと、互いの扇を取り交わします。
 
 恋しい人に会えない間、花子はひたすらその帰りを待ち、扇を見ては想いをつのらせるのでした。そうして他のお客もとらなくなり、宿の女主人に役立たずといって追い出されてしまいます。花子は恋情のあまり狂女となって、みんなから「班女」と呼ばれるようになります。これは、中国の漢の時代の、班婕妤(はんしょうよ)という女性のことを元にしたあだ名です。
 
 そうして都の糺の森へやってきた花子ならぬ班女(糺の森は今も京都・下鴨神社の中にあります)。一方、吉田の少将は東国から帰ってきて野上の宿を訪ねますが花子がいないので仕方なく都へ帰ります。そしてやはり糺の森へ行くのです。
 
 輿に乗って少将一行が森へ来ると、そこへ班女が通りかかります。班女の舞を見ているうちにふと、少将は彼女の持っている扇が、自分がかつて花子に渡したものではないかと気づきます。扇を見せるように言うと、これは単なる扇ではない、形見の扇なのだと言ってなかなか見せてくれない班女。しかし少将が自分の扇を見せると班女はこれは確かに自分の扇だとわかり、自分のを相手に渡します。そして扇を確かめ合い、無事に二人は再び会うことができたのでした。

 互いの扇を見、そして互いに見つめ合うクライマックスシーン、とてもロマンチックでした!!(//v//)

2016.9.22 京都藤々会は来年、30歳になります。
 今日は河村能舞台で京都藤々会の秋之大会がありました!!たくさんのご来場、誠にありがとうございました
 
 題にもしましたが、来年でこの会も30周年を迎えます。岡山の藤々会が今年で60周年ですから、ちょうど半分くらいで覚えやすいですね。今のところ来年に何か特別なことがあるとは聞いていませんが、とにかく今日の会が無事に済みましたので、これからゆっくり考え・・いやいや、まだ10月16日の会、11月6日の会があるがな。一難去ってまた一難。いやいや、それにまだ私は月曜までのレポートも書けてないではないか。えーん(泣)。
 
 うん。とりあえず先のことはまた今度考えればいいのだ。というわけで今日は今日の宴会を楽しみました。今回は四条河原町の東華菜館に参りました!!(^ ^)
 お料理はおいしかったですしお酒も・・ん、えーっとそうですね、お料理がとてもおいしかったですよ。
 
 来年の春之大会は3月20日。その2日前、18日が浦田定期能です(予定 素謡「東北」 シテ藤井千鶴子 仕舞「船弁慶キリ」 山崎浩之)。
 
 次回もみなさんの日頃の成果が会を豪華いろどりますように。ではまた河村能舞台でお会いしましょう!(^o^)/

2016.9.20 明恵上人 さて入唐は
 今日は台風の影響で多くの方の予定が狂っているようですが・・。両親も、予定していたことがなくなってかえって面倒なことになったと困ってました。
 

 私は昨日から高山寺の典籍調査に加えていただいておりました。高山寺は栂尾(とがのお)にあって明恵上人のいらしたお寺ですが、「鳥獣戯画(ちょうじゅうぎが)」のあるお寺、と言った方が親しみがあるかもしれません。あるいは「明恵上人像樹上座禅像」をご存知だという方もあるでしょうか。JRバスで行きましたが、紅葉のシーズンは特にたくさんの観光客が訪れるみたいですね。今日はあいにくと雨で側を流れる清滝川も増水しちゃってましたが、以前6月ごろ行ったときはたしかとてもきれいで涼しげな川でした。
 
 二年前
のちょうど今頃、京都国立博物館で高山寺展があって、私も父と二人で参りました。むろん鳥獣戯画も楽しかったのですが、それよりもおもしろかったのは、高山寺が所蔵しているものや、明恵上人の書いた、様々の文書類でした。中でも「大唐天竺里程書(だいとうてんじくりていしょ)」や「夢記(ゆめのき)」は私にとって、謡曲「春日龍神」を彷彿とさせるものでした。
 
 上人がどれほど中国そしてインドへ行きたかったかがじんじん伝わってきたのです。


  明恵上人 さて入唐は  止るべし
             渡天は如何に  渡るまじ
          さて仏跡は 尋ぬまじや


 ああ、かわいそう!(T T)行かせてあげればいいのに!・・と思ったものです。
 
 
 調査では展覧会の時に目にしたものも数多く見せていただいて、嬉しくて緊張してしまいました・・。今ごろになって変な汗が出てきちゃった。
 高山寺ネタは会が終わったあとにまた出していこうと考えています(そんなこと言ってもたぶん11月になっちゃいますね)ので、今日はこのくらいにしておこうと思います。
 


2016.9.11 まだちょっと先ですが・・
 朝晩が少し涼しくなってきましたね。先日、吉備津の家で寝ておりましたら虫の音が凄まじかったです。
 さて、題名のとおり、まだ先ですが11月6日(日)の秋の大会の番組ができあがりましたのでお知らせします!!
 赤い(朱色)のが番組で黄色が後楽園の入園券。緑がお茶券でございます。
 今年は藤々会60周年記念ということで、いつもよりちと華やかでございます。舞囃子が四番(「菊慈童」「三井寺」「百萬」「山姥」)があるのに加え、私が能「猩々乱」を舞います。どうぞみなさまお誘い合わせのうえ、ぜひぜひお越しくださいますようよろしくお願いいたします!!(^o^)/
 それから、京都の秋之大会、岡山での楽しむ会、岡山の秋之大会と、秋は会が続きます。・・が大学院は授業が始まってしまいます。そういうわけでこのページの更新途絶えがちになろうかと思いますが、ご容赦願います・・。(^ ^;)
 

2016.9.5 秋のたより
 みなさまこんにちは!昨日は定期能にたくさんご来場賜りまして、ありがとうございました!!
 座席の新しくなった観世会館で初めて能を見ましたが、なんだかいい感じになってました。舞台の上の人からもお客さんがよく見えるようになったらしいです。
 「賀茂」と「雲林院」もみなさんに満足していただけたのではないでしょうか。
 またこれからもどうぞよろしくお願いいたします!!
 

2016.9.3 賀茂参詣 ~下鴨神社~
 先日の上賀茂に続き、今日は下鴨神社へ行って参りました!!(^ ^)近頃朝晩は風が涼しくて、秋の訪れを感じるようになりました。
 下鴨神社は毎日のように側を通りますし、お正月には初詣に行きますので、特に親しみのある神社です。能「班女」でもここ、下鴨神社の(ただす)の森で恋人同士が再会を果たしますよね。ちなみに「班女」は今年の「たのしむ会」で上演しますのでお楽しみに!
 蹴鞠があったり、流鏑馬や葵祭で賑わう神社です。みなさんもこれを機会にぜひ一度いらしてみて下さい。
 ではまた明日、観世会館でお会いしましょう!
  


2016.8.29 賀茂参詣 ~上賀茂神社~
 もうすぐ浦田定期能ですね!今度の演目は「賀茂」と「雲林院」。というわけで上賀茂神社に行って参りました!
 うちの家族は毎年お正月に下鴨神社に行くのですが、それに飽きると(ひどいな)今年は上賀茂神社へ行こうかとなるんです。正式名称は「賀茂別雷神社(かもわけいかづちじんじゃ)」です。これに対して下鴨神社は「賀茂御祖神社(かものみおやじんじゃ)」。能「賀茂」の中で語られるお話のとおり、親子で祀られているのです。
 それで、本当だったらもう少しちゃんと説明したいところなんですが・・省くことにして、みなさんぜひ行ってみてくださいということで。能「賀茂」のあらすじだけ書いておきます。

 能「賀茂」
『山城国風土記』に記された、賀茂の社の祭神の由緒を語る祝言の曲
  水無月のころ、播磨国の室明神の神職が賀茂の社に詣でる。見れば川辺に壇を築き、白木綿(幣)に矢を立てている。そこへ里女が御手洗川に水を汲みにやってくる。神職がその矢のいわれを女達に尋ねると、女はその矢こそこの社のご神体ともいうべきものだと教え、賀茂の社の由緒を語る。 
 昔、賀茂の地に住む秦氏の娘が川を流れてきた白羽の矢を拾い上げて帰り、軒にさしておいたところ懐妊し、男子を生んだ。その子が三歳になった時、父の名を尋ねるとその矢を指し、天に昇って神となった(別雷神)。その母もまた御祖神となったのである。
 女は由緒を語ると自らその神であることを明かして消えてしまう。(中入り)
 やがて御祖神が天女の姿で現れて舞を舞い、続いて別雷神が天地を揺るがして出現し、雷鳴を轟かして豪壮に舞い、五穀豊穣を祝い、国土を守る神徳を現したのであった。 

2016.8.15 内ぞ涼しき
 日付が前後しましたが、7日の日曜日に岡山ルネスホールで夏の浴衣会がありました!みなさんリラックスした様子で謡いに聞き入っておられますね~~(^ ^)
 本当に毎日、京都も岡山もうだるようなというか燃えるようなというか、焼け付くような暑さですから・・(^ ^;)
 浴衣はやっぱりいいですよね、楽だし涼しいし。それに涼しげなお菓子も食べられたし、大満足でした!
 この日は「鸚鵡小町(おうむこまち)」というちょっと難しい曲がありました。年老いた小野小町が、和歌での問いかけに即座に、つまり鸚鵡返しに返歌をするというお話です。
 帝の使いとしてやってきた行家が「雲の上は ありし昔に変わらねど 見し玉簾の 内ゆかしき」と問いかけたのに対し、小町は「雲の上は ありし昔に変わらねど 見し玉簾の 内ゆかしき」と、歌の一文字だけを変えることによって見事に返事したのです。
 疑問の「や」を強調の「ぞ」に。さすがは小町、ですね!
 

2016.8.9 飽きない秋の一日に


さて、今年もやってまいりました「岡山後楽園で能をたのしむ会」!!今年は能「班女」「春日龍神」を上演いたします。
「班女」は中国の故事をうまく織り込んだ美しい恋の曲。「春日龍神」は明恵上人春日詣でのお話。どちらも見応え充分の名曲です。
どうぞみなさまおいで下さいませ!

2016.7.27 浦田定期能のお知らせ

 
 梅雨も明けて、本格的に夏の日差しが厳しい今日この頃です。京都は祇園祭が終わりを迎えております。
 さて、今日は九月の浦田定期能のお知らせです!今回の能は「賀茂」と「雲林院」の二番です。「賀茂」ではシテを山崎浩之がつとめさせていただきます。ぜひぜひお越し下さい!!改築した京都観世会館で、みなさまとまたお会いできるのを楽しみにしております。


2016.7.14 もうすぐの会 
 いよいよあと数日に迫ってまいりました、今年の「関西観世花の会」。今年は大阪大槻能楽堂で開催されます。藤井千鶴子・山崎芙紗子も出演致します。当日は私も友達と見に行きます!楽しみですね~(^ ^)
 というわけでもう一度チラシを掲載しておきますね~
 みなさんもぜひぜひ!見に来てくださいませ!!

  

2016.7.6 ご無沙汰です。

(少しでも涼を・・と思わず全然関係ない画像。山崎ビール工場にて。)
 私以外、家族の誰も更新しないこのHP。そんなことでいいのかと思いながら、自分が一番時間が自由なものですから、しょうがないのかなと半ばあきらめてます。
 さて、今日はこれといった話題はないのですが、来月7日に迫った夏の歌仙会のために、日々(?)お稽古しております。夏といえば近頃は本当に暑くてどうしようもありませんね。両親の世代が子どもの頃は、30度を超えたら大騒ぎだったそうですから、とんでもない時代になったものです。
 5月の入門鑑賞会でも、暑さのひどい時はどうなることやらと心配させられます。舞台の上で頑張る方も、見ている方も我慢大会みたいになってしまうことがありますから・・。屋外はなにかと大変なんです。
 なんだか愚痴ばかりになってしまいましたね。
 まだまだ暑い日が続きますが、熱中症に気をつけて、これからもがんば・・まあ、ぼちぼちやりましょう。

2016.6.16 続けていくということ ~イチロー選手の記録に寄せて~
 すっかり忘れ去られているかのような藤々会の60周年ですが、久しぶりに話題にしてみようと思います。
 というのも、今日またイチロー選手大記録を達成したからであります。実は私、イチロー選手の大ファンでして(以前にもお話したかもしれませんが)。私は日米通算だろうと一番ヒットを打ったのはイチローだと思ってますが、まあご本人が「大したことない」とおっしゃるならそうなんでしょう(たぶん、メジャーだけで4257本打つおつもりなんですね。今に見てろってなもんですね。そういう所が本当に最高。大好き)。
 さてさて、イチロー選手のすごい所といえばそのいわゆる「準備」だとよく言われますよね。そしてそれを継続することだと。
 藤々会も今年でめでたく還暦を迎えました。
 ここまで、本当に大変だったと思います。私が覚えている時だけでも、たくさん苦しいことがありました。悲しいことがありました。それでもこうして続けてこられたのはなぜだろうと考えますと、やはり能に対して理解ある人たち支えられているということが大きな要因ではないかと思います。本当に感謝しかありません。
 そして観に来て下さるお客様が、次も楽しみにしているよと、あるいは初めて観たけどとても良かったよなどと言って下さることがなにより励みです。
 イチロー選手が「チームメートやファンの人の反応が嬉しかった」と語っておられるように、私達舞台で頑張る人間もやはり、お客様に「ああ今日はいいものを見た。明日からまた仕事だけど、もうちょっとこの空気を味わっていたいな。」なんて思ってもらえたら能楽師冥利につきるだろうなと思います。
(能:江口)

2016.6.15 名作を見たい。
 みなさんはそれぞれ何かしらこれぞ「名作」と思われるものがありますか?
 
 映画
でもドラマでも絵画でも彫刻でも歌舞伎でも何でも、「名作」と呼ばれるものがあると思います。もそうです。
 何度見ても飽きない、素晴らしい、泣ける、楽しい。そうした曲目はやはり何度でも見ていただきたいものです。
 すぐに思いつくものでも、「葵上」「野宮」「松風」「熊野」「隅田川」「藤戸」「安達原」「天鼓」「船弁慶」「敦盛」・・・こういう曲が私は大好きです。
 が出る、きれいな女の人が出る、作り物がおもしろい、などなど・・たくさん見どころがあると思います。そして、愛されてやまない古典文学「源氏物語」「伊勢物語」「平家物語」・・などを典拠にしていることが最大の魅力と言えるでしょう。
 
 名作は名作であるが故に、誰でも展開を知っています。結末もわかっています。それでもまた見たくなるのです。何度聞いてもいいのです。より多くの方が、そんな曲に出会う機会をもってくださると嬉しいです。


2016.5.20 自然居士、女の子を助ける
 先日、5月14日に岡山後楽園能舞台にて、無事に入門鑑賞会が行われました!!
 とても良いお天気に恵まれて、ご来場の方々も心地よく舞台を楽しむことができたのではと思っています。
 「自然居士(じねんこじ)」は身を売って人買いに連れて行かれた少女を、自然居士という青年僧が救出するお話。ワキ方が人買いの役で、少女を助けに船着場へとやって来た自然居士と激しく言い争います。そして芸達者の居士は舟を褒め称えるクセ舞ささらの舞鞨鼓の舞を見せ、人買いからようやく少女を取り返すことに成功するのです。
 「自然居士」はまた言葉の芸能でもあります。

 なうなうその御舟へ物申そう(自然居士)
これは山田矢橋の渡舟にてもなきものを。何しに招かせ給ふらん。(人買い)
 我も旅人にあらざれば。渡りの舟とも申さ  ばこそ。その御舟へ物申そう。(自然居士)
さてこの舟をば何舟と御覧じて候ぞ(人買い)
 その人買舟の事ぞおよ(自然居士)
ああ音高し 何と何と(人買い)
 道理道理。外にも人や白波の。音高しとは 道理なり。ひとかいと申しつるは。その舟漕ぐ櫂の事ぞおよ。(自然居士)
櫂には唐櫓と云ふ物あり。ひとかいと云ふ櫂はなきに。(人買い)
 水の煙の霞をば。一霞二霞。一入二入なんどと言へば。今漕ぎ初むる舟なれば。一櫂舟とは僻事か。(自然居士)
げに面白くも述べられたり。さてさて何の用やらん。(人買い)

2016.5.10 次の曲は?
 5月4日(水)に岡山後楽園能舞台で、〈創立60周年記念大会〉藤々会春之大会が催されました!強風に振りまわされましたが、お天気も良くてお客様もたくさん来てくださいました!(^o^)

 謡も大きな曲が出て、舞囃子も七番あって、いつも以上に華やいだにぎやかな会でした。本当にお弟子さん方それぞれの努力の結果だと思います。見に来られた方もきっと満足してお帰りになったんではないでしょうか。
 会の後の宴会は、毎年岡山のプラザホテルであります。私はいつもこの宴会の時にすごいなと思うんですが、お弟子さんたちはみなさん、次の曲は何がいいかという話をなさるんです。あれが謡いたいこれを舞いたいと盛り上がっています。終わったばかりなのに、その意欲に脱帽です。でもそのパワーがこの会がずっと続いてきた由縁なんでしょうね・・。v(^^)v
 
 祖母が25歳で始めてから、今までたくさんの方に支えていただき、たくさんの出会い別れがあり、困難があり、慶事があり、そんな中で節目の60回をこの後楽園の能舞台で迎えられたこと、とてもありがたく思います。
 こんな幸せをくれるみなさんに今日も感謝です。
 これからも藤々会一同、ますます頑張ってまいりたいと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。m(_ _)m

  げにさまざまの舞姫の 声も澄むなり住吉の
  松影も映るなる 青海波とは これやらん
 神と君との道すぐに 都の春に行くべくは
  それぞ還城楽(げんじょうらく)の舞
 さて万歳の
  小忌衣(おみごろも)
 さす腕(かひな)には 悪魔を払ひ をさむる手には 寿福を抱き
 千秋楽は民を撫で 万歳楽には命を延ぶ
 相生の松風颯々の声ぞ楽しむ 颯々の声ぞ楽しむ
                             「高砂」より

 さあ、いよいよ今週の土曜日に入門鑑賞会です!
 能二番と狂言をお楽しみに!!  

(上:仕舞「嵐山
下:舞囃子「高砂五段」)

2016.4.28 先生!
 藤々会を始めた藤井千鶴子が、なぜ能に触れることになったのかということを初めてくわしく語ったのが左の本(『能楽を愛好した人々の思い出集』東海能楽研究会 2011年1月発行)です。たくさんの方々のうちの一人として書いたものですから文章の量はわずかですが、内容はとてもおもしろいものです。
 
 故・橋岡久太郎先生が故郷で病気になられ、岡山の病院で療養なさっていたこと。その半年間に、父(私にとっては曾祖父です)が謡を習っていたこと。それがきっかけでお稽古をしていただくようになったこと。先生が東京から毎月岡山へ汽車で来られていたこと。それに先生のお稽古の凄かったことなどが語られています。
 
 藤井千鶴子が子供のころに謡曲を習い、25歳で会を立ち上げるまでになった経緯を知ることができます。
 このを手に取る機会を持たれたら、ぜひ藤々会の原点に迫ってみてください。 
  
 余談ですが、久太郎先生は逸話の多い方で、祖母から思い出話を聞かされる度に私は仰天しております。


2016.4.16 今年ばかりは喪の色に咲け
 昨日は熊本の地震についても少し触れましたが、今日はまた寂しいお話です。今朝、長年にわたって京都の藤々会で頑張っておられたお弟子さんの訃報が届きました。
 春になると、バスに揺られながら川端通りの桜並木を堪能して、松ヶ崎にあるお稽古場まで来られていました。毎年、車窓から見る桜をとても楽しみにしておいででした。今年もそれを楽しみにしておられたと思うと・・。本当に桜の花の散るように、逝ってしまわれました。
 退職なさってから能を習い始めて、お弟子さんたちの中でもベテランでした。岡山の会にも出演してくださって、ご本人が楽しんでお稽古しておられるのがよくわかりました。会の時は私の手を強く握って励ましてくださいました。
 多くの出会いは多くの喜びをもたらしてくれますが、またこうして悲しみも味わうものです。
 せめてもう一度、お会いしたかった。どうぞ安らかに眠ってください。

2016.4.15 かきつはた」の五文字を句の上に据ゑて、旅の心を詠め。
 新年度を迎えてさすがに忙しくなってきまして、ちょっとこれからはペースが落ちるかもしれませんが、催しのご報告は欠かさずしますので。
 昨日はひどい地震がありましたね。災害がこうも続きますか・・。被害に遭われた方々やそのご家族を思うと、なんだかやるせない気持ちになります。そして明日は我が身かと恐れなければなりません。けれどそんな不安な時こそ、私はいつも文学頼もしく思います。
 岡山市にある後楽園は日本三庭園の一つにかぞえられています。その庭園の中に伊勢物語の「東下り」の段に出てくる「八つ橋」を模した場所があります(右写真)。
 子供の頃、わけもわからずにこの橋で友達と遊んでいたころを懐かしく思い出します。
 毎年、ちょうど春の素人会のころに花は見ごろを迎えます。みなさんもぜひ一度いらしてみてください。

在原業平の気分を味わえます!つつじも同時期。)

2016.4.10 関西観世花の会、今年は「羽衣」「猩々」やります!!


2016.4.4 能って楽しめるものなんだ!(^o^)

(少年 = 天鼓の亡霊は、鼓をうてることが嬉しくてたまらない)
 いつのことだったか、確か一年ほど前ですが、岡山で能をご覧になったお客様のアンケートの中に、こうした感想がありました。
「能ってこんなに楽しめるものなんだと知りました。」
 きっと初めて来て下さった方だったのでしょう、催す側にとってこれほど嬉しい言葉があるでしょうか。
 この方はそれまでどうだったかわかりませんが、能って古いとか遅いとか、地味とか、難しいとか一般的には思われがちなんじゃないかなと思います。
 だけど、たしかに車も電気もケータイもネットもない時代のものだけど、カラフルリズミカルハラハラドキドキする、それが本当の能の姿です。
 伝統芸能という枠組みにあっても、それが一曲の能とそれを鑑賞するみなさんの間に隔てを作らないことをいつも切に願っています。

2016.4.3 滔々と変わる   藤々会60年の歩み ~

(三年前の5月、春日大社に向かう道すがら咲いていた。)
 が見頃を迎えつつある時期ですが、今日は一足早くのお便りをしようと思います。 来月4日に迫りました、岡山藤々会春之大会。藤々会は今年でありがたいことに創立60周年を迎えます。60年前、当然私は影も形もないわけなので、どこまで正確なお話ができるか危ういのですが、今年一年で藤々会のこれまでの歩みを振り返ってみようかと思っています。
 一年ですから、どうぞ気長にお付き合いください。


2016.3.26 花を散らしたる如くにて

  (素謡「羽衣」 10時半ごろ:河村能舞台にて)

 さて、先日行われました、春之大会ご報告です!!(^v^)
 たくさんのみなさまにご来場いただきまして、本当にありがとうございました!
舞台の上のに見とれ、聞きほれるみなさんを後ろからパシャリ。。
今回は長兄・浩之がインフルエンザで出場停止となりまして、誠に失礼いたしました。 m(_ _;)m 
 しかしその不測の事態にも関わらず、お弟子さんたちはそれぞれがめざましい成長披露なさいました。今回はお囃子も、神楽など、難しい笛のものをはじめ、初のお囃子挑戦の方、また初舞台の方など、たくさんの方々が藤々会に新しい風をいれてくださいました。お客さんたちもとてもご満悦でお帰りになったようですよ!!
 
 そうそう、そして毎回のお楽しみの一つ、会の後の宴会ですが、今回は四条にあるレストラン「菊水」で行いました!南座の向かいにあります。

 (デザートを目の前で調理してもらえました~~((((°O°;))))))わお

 次回、藤々会秋之大会9月22日秋分の日、同じく河村能舞台ですので、どうぞまたよろしくお願いします!


2016.3.20 舞ふとかや

上村松園の「序の舞」をモチーフにした昔の切手。家の押入れから発掘しました。五十年も前のものですね。松園さんは謡曲を題材にした絵を多く描かれたことでも有名です。「松伯美術館」は奈良市学園前駅からバスに乗ります。)
 いよいよ明日発表会の日となりました!きっとみなさん日頃の稽古成果を存分に発揮されることと思います!

 ところで、舞囃子をご覧になるとき、みなさんどのように考えておられますか?舞囃子の中でも、謡いのある部分はだいたい言葉通りの動きになるわけですが、謡いのない部分、音楽だけの部分はどうなるのか?

 実はこの時は笛を頼りに舞っています。ですからお稽古するときはまず笛の唱歌を覚えることから始めます。
 「オヒャーラーイホウホウヒ」などというものがそれです。初めての方はまず中之舞(ちゅうのまい)など易しいものから。そしてこれには「」といって区切りがありまして、それはどうすればわかるのかというと、扇を持ちかえる動作があればそれが「段をとる」ということになると考えて下さい。右手から左手に持ち替えたら初段から二段、左手から右手にしたら二段から三段になったという具合です。

 このような仕組みを少しでも理解してから見てみると、ちょっと楽しさも増えるでしょうか。
 ではいざ!!(^o^)/


2016.3.18 花見のトンネル抜けると、清水寺であった。


 突然ですがコレ、なんだかわかりますか??
 能の「作り物」ってそれこそ山ほどありますけど、大きなものは例えばとかとか御殿とか、まあ見たことある方も多いと思います。でもこれは「熊野(ゆや)」という曲だけに使われる、貴族の乗り物、なんです。まず「ゆや」って知らないと絶対読めませんよねえ、でもこれはそう読むものなんだということで。能といえば「熊野、松風」と言われるくらい、名曲で知られているくらいなんです。
 「ゆや」というのはシテの女性の名前で、彼女は平宗盛愛妾。そうそう、昔よく友達が言ってました、平家の人の名前にみんな「盛」が付くからややこしくて覚えられないって。この「盛」さんは平清盛の息子の一人です。重盛は早死にした聡明な人、知盛は勇猛な武将と、私の中ではそういうイメージですが、とにかくこれらの人達はみんな清盛の息子です。そして曲の中ではまだまだ平家はモリモリです。優雅にお花見に出かけるんですね~(^ω^)で、このへんのあらすじはまあ「あらすじ」を読んで下さい(雑!)。ちなみにこのホームページのトップの写真は、熊野が和歌短冊にしたためている場面。彼女の心中はいかばかりでしょうか。
 京都でも岡山でも、舞囃子で出ますので、ぜひぜひ見ていただきたいです!
今回は「村雨留(むらさめどめ)」という小書きが付いていますが、これは普通のと何が違うかというと、急に雨が降ってきて、そして桜が散ってしまうんです。その散る桜が熊野には一体どう思えたのか。ここをお見逃しなく! 

2016.3.17 ある夜の睦言(むつごと)・・ 

(高校卒業後の春休みに、中学時代の親友と一緒に行った大神神社(おおみわじんじゃ)の境内。「三輪」の舞台ともなる「玄賓庵」はこのもう少し北にあります。曲の中では玄賓僧都はワキとして登場します!)
 なんと今日はちょっと色気のあるオトナの曲!?・・というほどでもないんですが、実は私、こないだの日曜から寝込んでまして、久しぶりに洗面器にお風呂以外の場面でお世話になりました。まあまあ回復してきたのですが・・。それで夜、眠れなかった時にこの謡の文句を思い出したと、そういう流れです(どんな流れだ・・)。

 さて今回は謡曲「三輪(みわ)」のポイントとなる、大神神社の杉の前から。三輪山を御神体とするこの神社は、天理にある石上神宮(いそのかみじんぐう)(七支刀:しちしとうで有名ですよね)から続く山辺の道(やまのべのみち)の終着点といえます。あたりを箸墓古墳などの多くの古墳万葉集に詠まれた旧跡の数々に囲まれた場所で、古代を満喫するに充分です。
 そんな古代のお話の一つが「三輪」のクセの部分で語られます。
 お二人の寝室での会話をちょっと気が引けるけど聞いてみましょう。

 かの人 答へ言ふやう げにも姿ははづかしの 洩りて外にや 知られなん 今より後は通ふまじ 契りも今宵ばかりなり と懇ろに語れば さすが別れの悲しさに (女は男の)帰る所を知らん とて 苧環に針をつけ (男の衣服の)裳裾にこれを 綴ぢつけて 跡を控へて慕ひ行く
 
 女性は、夜にだけ自分のもとを訪ねて来る男性が、どこから来ているのか、帰る彼の着物の裾に、糸を通した針を刺しておいたのです。ロマンチックだわ・・(∥∇∥)

 しかして彼の正体は・・・京都では素謡で、岡山では舞囃子で、ぜひお楽しみ下さい。
 びっくりぽんや!!!(;°O°)・・と思います。 

2016.3.12 秘術を奮ふならば
 3年前、「岡山後楽園で能を楽しむ会」にて上演された能「熊坂(くまさか)」。
 主人公は神出鬼没の大泥棒、ルパンⅢ世・・ではなくて・・熊坂長範(くまさかちょうはん)。盗賊の首領だった彼が、最後に敗れた相手が牛若丸、若き日の源義経でした。牛若丸といえば、五条大橋で武蔵坊弁慶と初めて出会って、彼を打ち負かしたことが思い出されますよね(これは「橋弁慶」のお話です)。ヒラリヒラリと身軽に刃をかわす印象かな?
 では熊坂と牛若丸の戦いの様子を謡の文句から想像してみましょう。

 (熊坂は)道より取って返し 例の長刀 引きそばめ 折妻戸を小楯に取って かの小男を ねらひけり 
 牛若子は御覧じて 太刀抜きそばめ 物間を 少し隔てて待ち給ふ 
 熊坂も長刀かまへ たがひにかかるを待ちけるが ・・

 とまあ戦いの本番はここからですが、暗闇の中で互いに互いの武器をかまえている、その緊張した様子が読みとれます。
 「熊坂」の長刀さばきは数ある能の曲目の中でも屈指の難しさ。「巴(ともえ)」「船弁慶(ふなべんけい)」よりもう一段激しく、美しく凝らされた動きです。ぜひ春の京都の会では仕舞で、岡山では舞囃子で、「熊坂」の長刀さばきをお楽しみください!!(^o^)/

2016.3.11 中将姫の祈りとともに 

 今日は東日本大震災からちょうど五年ですね。もう五年・・でしょうか。 
 あの日、私は用事を済ませて、地下鉄に乗って家に帰りました。ふう~と思ってテレビをつけると、畑を次々と呑みこんでいく津波の映像が。でもその時は、ん?映画?と思い、チャンネルを変えました。すると同じような映像が。え?・・なんだこれ・・。んん?またチャンネルを変える、またしても同じような映像。そしてついに地震のこと、これが「津波」の映像であることを理解しました。とにかくよくわからないけど、大変なことが起きているぞと・・。原子炉のあの四角い建物にヘリコプターが水を撒いている映像はなんともいいようがなくて、どうしようもないんだなっていうのを感じました。

 あの日から五年。亡くなった方々はもちろん、被害に遭われた方たち、他の様々な方々や事柄に対して、手を合わせたい一日です。
 今年は当麻寺(たいまでら:當麻寺)紅葉の景色を見ながら。当麻寺は謡曲「当麻(たえま)」や「雲雀山(ひばりやま)」に出てくる中将姫ゆかりの寺。私も小さいころ、「雲雀山」の子方(こかた)で中将姫になりました(全然覚えてないんだけれど)。お父さんの豊成が姫を迎えに来るのですが、その時、姫の乳母は・・。

 当麻寺は二上山の麓にある古寺です。珍しく東塔と西塔が建立当初から残っているお寺でもあります。みなさんもどうぞ一度いらしてください。近くには「相撲館けはや座」もあります。

2016.3.10 不可能犯罪
 今日はなんだかゾッとしないタイトルですね。でもこれはいつか書こうと思ってたんです。
 タイミングがなかったんですが、昨日変な夢を見ましてねえ・・。大学の卒業式で盗みを働いて警察に逮捕されるという、意味不明な。まあそれはどうでもいいんですが、能・・はよく2時間サスペンスとかでネタにされると思いませんか?でも、あれって見るたんびに不可能犯罪なんですよ。おかげさまでお笑いより数段おもしろいサスペンスドラマをいつも楽しんでます。
 どのあたりが不可能かって、まずたいていのドラマは、面(おもて)をつけている人がすり替わる。で、それに誰も気づかなかったという展開。
 装束をつけるには少なくとも前後に2人の人間がいります(これが後見の大事なお仕事)。もちろんそれを手伝う人がもう1人くらいいるかもしれません。さらに面は鏡の間といって、幕のすぐ近くの大きな鏡の前でつけますから、つまりそこまでは素顔なわけです。ということは幕を上げる係りの方にも見られる。この段階で共犯者が五人くらいは必要になるわけですね。
 そして舞台に出て謡うということになれば、舞台に出演する全ての能楽師は共犯でないとだめでしょう。だって声が違うんだもん。たぶんお客さんも気づくと思います。
 そこで百歩譲ってこれが双子だった場合、あるいは謡いのない場面だった場合、次なる関門は面に塗られた毒です。面の内側の、口の所に塗られてたパターンです。
 実は面は肌にほとんど直接は触れていません。これは「アテ」というクッションを各能楽師が面の内側に貼っているからです。謡うたんびに面に口が触れたりしたんじゃ謡いづらくてしょうがないですし、面が汗まみれになって傷んでしまいます・・。木ですしね。もし毒にあたって倒れるとしたら、舞台ではなく鏡の間で倒れると思います。塗られてることに気づいたとしたらすぐ拭くでしょう。
 それともう一つこのトリックには穴があります!それは・・・容疑者がものすごく絞られてしまうということです!!(^ ^)/ だって面に触れられる人間は限られていますから・・2人くらいにはできるんじゃないかなあ。破綻必至の犯罪計画なのです。。
・・いったい私は何を力説してるのかしらん・・ 


2016.3.6 遅くなりました!初会のご報告です!
 遅ればせながら、先月11日に岡山のルネスホールで今年の初会がありました!
 今回も例年どおり、みなさんの奮闘のおかげで良い会になったようです。内輪の会なのでみなさんリラックス気味です~(^v^)
 時が経つのは早いもので、五月の春之大会まであと二ヶ月ほど。今年は藤々会六十周年記念大会ということでちょっと気合い入ってるんでしょうか。
 次が楽しみです!!

2016.3.5 今は春べと
 今日は今年の浦田定期能の第一回、能「桜川」と「遊行柳」が上演されました!(^o^)
 「桜川」は、素人会でも仕舞で「網之段(あみのだん)」がよく出ますし、わりと親しみのある曲かと。ただ能を見たという方は多くないかも。上演頻度は高い方ではないですね。
 お話はわかりやすく、お母さんが売られた子供を取り返しに行くという内容です。このお母さんすごいんです、日向(今の宮崎県)から常陸(今の茨城県)まではるばる子供を捜しに行きます。いや、というのはそういうものなのかもしれませんね。「隅田川」のお母さんも、都から武蔵の国(今の東京都)まで旅してますし、「百萬」のお母さんも奈良から京都まで行きますし。それに今回は悲劇ではなく最後は子供と会えてハッピーエンドで、救いがあって本当に良かったです。 

2016.3.4 あらおもしろの遊楽や


 みなさまご存じ、五人囃子です。この並び、もうおわかりですよね、能とおんなじです。客席(見所:けんしょ)から見た時に、左から太鼓、大鼓、小鼓、笛、そして地謡(ぢうたい)というわけです。大鼓と小鼓は腰かけていて、他は正座しているのも一緒。いつも見ている当たり前の光景・・しかしこの並びはとても合理的だと私は思います。でもそのお話はまた次の機会に


2016.2.26 カクカクシカジカ
 皆様まことに申し訳ありませんでした!!m(_ _)m
しばらくの間、ホームページが開けない状態になっていたようです。
原因はちょっとお恥ずかしいほど単純なものでした。

このたび復活いたしましたのでまたこれからもどうぞよろしくお願い致します!

2016.2.24 誠に勝手ながら・・
 お久しぶりです!!(^ ^)
長らくお休みしておりました。やっと私の身の振り方が定まりまして・・といってもちょっと先が決まっただけですが。というわけでこれからしばらくはまたダラダラと書いていきますので。
 ずいぶんとほったらかしてましたが、前回の画像は吉野の勝手神社です。
そしてどういういわれがあるのかというと・・


さあだいぶ仕事をはしょりましたが、だいたい看板(だいぶ古そうだけど)のとおりです。能の曲ではこの勝手神社を舞台にした「二人静(ふたりしずか)」や「吉野静(よしのしずか)」があります。二人静では、静御前の霊がのりうつった菜摘女が、勝手神社に奉納されていた静御前の装束を身につけて舞を舞います。そしてそこへ同じ装束を着て現れた静御前の亡霊相舞(あいまい:二人で息を合わせて同じ舞を舞うことです。シンクロするととってもキレイ!をするというとてもおもしろい曲です。ぜひ一度ごらん下さい。そして能は見たことないけど、以下の謡を聞いたことはあるという方も多いのではと。

  しづやしづ
 しづやしづ 賤(しづ)の苧環(おだまき) 繰りかへし 
  昔を今になすよしもがな
 思ひかへせば いにしへも  
  思ひかへせば いにしへも 恋しくもなし 憂き事の 今も恨みの衣川
  身こそは沈め 名をば沈めぬ 
 武士(もののふ)の               ・・・

この言葉だけでも涙がつつーっと落ちるような気がしますね。
静さん、義経さまと、どこかでまた会えましたか・・?

2016.1.14  涙の跡
さあ~続きましての吉野でございます!
すこし気合いが空回りしてる気がしないでもないですけども。。
なにせ話題に詰まって吉野と能をムリヤリくっつけようとしてますからね今・・
もちろんすごく関わりあるんです、私が知らないだけです!(^ ^;)
で、突然ですがコレ、どこかおわかりですか?


いつもだったらすぐ説明なんですけど・・次回のお楽しみということで。

2016.1.13 これはこれはとばかりに 


 みなさま、あけましておめでとうございます!!
 今年も藤々会とはりきっていきましょう!!d(^o^)b

 え?新年なのにお正月の写真はどこだって?
 実は私、今年の冬はちょっと余裕がないんですよ(そう!私の都合に振り回されるホームページなんです)。
 
上の写真は去年の春、両親と三人で吉野に行った時のもの。
 霞みにまぎれて天女ならぬ蔵王堂が美しいですね~(^-^)
 というわけで、しばらくこの吉野ネタでいこうと思います。
 二月にはタイムリーなお話ができるよう頑張ります!!


2015.12.16 賀茂(カモ)~ン!! 
  
 
 いよいよ年も暮れて参りました、近頃やっと本格的な寒さがやってきたように思います。今年一年もまた大変な年だったなあとしみじみ感じているところです。
 さて、ふりかえりもそこそこに、来年のお知らせです!
 例年のごとく、藤井千鶴子・山崎芙紗子・山崎浩之が浦田定期能 に出演いたします。あっ、解説でおなじみのY・Y先生もやっぱりおなじみですね!                  
 今年もまたこうして来年のお知らせができますこと、皆様のご支援のおかげといつも心より感謝しております。m(_ _)m                      
 来年も
たくさんのご来場を賜りますよう、藤井・山崎家一同、よろしくお願い申し上げます!\(^ ^)/
 それでは皆様、どうぞ良いお年を!!                            


2015.11.6  秋の大会~岡山篇~
上:玉之段 下:歌占  ご報告が遅くなりました!先日、11月1日に岡山後楽園にて藤々会秋の大会を開催いたしました!!o(^v^)o

 天候が心配でしたがなんとかもってくれてヤレヤレ・・です。

 その一方、お弟子さんたちの舞や謡はいつもながら完成度が高い!!
 岡山は祖母・藤井千鶴子が長年教えてきた方も多く、歴戦の勇者が揃ってるんですね~(^^;)
 特に舞囃子は、今回も凝った難しい曲・「」「頼政」やら、笛の唱歌を覚えるのが難しい「(がく)」「神楽(かぐら)」なんかもあったんですが、いやあ~拍子が正確なこと!なかなかできないことをさらりとやってしまうってかっこいい!!

 もちろん新しくデビューされた方もおられて、ますます会の未来が明るい方へ向かっています!
 ほんとに嬉しいです(^^)/

 秋の肌寒い日に、たくさんのご来場いただきまして、みなさまありがとうございました!!


2015.11.3  敦盛も馬引き返し 
 
 今日は「文化の日」なので、先日の「敦盛」がらみで、あるお寺ご紹介しようと思います。有名なお寺なのでご存じの方も多いかも。兵庫県神戸市須磨区にある、「須磨寺」です。私がここに行ったのは二年前の夏でしたが、とてもよく覚えています。というのも、このお寺はそれまで行ったどのお寺より、童心をくすぐる仕掛けがたくさんあったからです。「なんだろこれ?」と思ってネジを回すとメロディーが流れたり、前を通ると模型が動き出したり、はっきり言ってめちゃくちゃおもしろい。ぜひ一度行ってみてください!!                       
                
  最後に、写真は境内の「源平の庭」。逃れようと海に入る敦盛と追いかけてきた直実ですね。かつては殺し殺された二人。風雅を愛した少年と、勇ましい東国武士の菩提を弔うため、手を合わせました。                                     

2015.10.22  さん太タイムズ 掲載!
  山陽新聞の子どもしんぶん・「さん太タイムズ」に、先日のたのしむ会の記事が掲載されました!(^^)
  能のこと、狂言のこと、これを一つの機会に、日本の伝統芸能に興味を持ってくださる方が一人でも増えたら嬉しいです。
  未来を担う人に伝統を繋いでいくことは、本当に地道で難しいことですが、それを続けていけるように、これからも藤々会一同、頑張ってまいります!!
(^^)/
  あっ、この新聞は10月18日(日)のものです!みなさんお読みくださいませ~!

  


2015.10.18  秋の大会~京都篇~
 河村能舞台にて、藤々会・の大会が行われました!!o(^^)o

 お社中のみなさんに素晴らしい舞台を見せていただきました!来て下さった方々もとても満足しておられるようで、良かったです~!!
 舞台でお弟子さんたちがみなさん頑張っておられるのをいつも拝見しているわけですが、今日は新しいジャンルに挑戦しているんだなあ~とか、まだまだ上手にならはるやろな~などなど思っていました次第です!!
 自分も負けてられんっ(^^;)

 春の大会ではお囃子に初挑戦の方もおられますし、いよいよ楽しみになってきました!

 あっ、ちなみに今日のお茶席のお菓子は大黒屋さんの「鎌餅」!いただきましたか?甘くておいしかったです!
 
そして宴会でおいしい中華をいっぱい食べて、京都の秋は今年も終わりに。

 次は岡山
だ~!
 
(上:仕舞「井筒」の一場面。
下:東華菜館からの景色)


2015.10.3  公達の出で立ち

  先日の「岡山後楽園で能を楽しむ会」のご報告です!
上は能「敦盛」の一場面。一ノ谷の合戦で熊谷次郎直実に討ち取られた平家の公達・敦盛。
  さて、今日はこの敦盛の出で立ちについてちょっとふれてみたいと思います。まず面(おもて)ですが、これは「十六(じゅうろく)」と呼ばれる面で、これは敦盛が討ち取られた時に十六歳であったことからついた名です。「十六」はとても美しい面で、女性のような雰囲気を備え、(「敦盛」ではしばしば女面が用いられることもあるほどですが)敦盛が若い少年であったことがしのばれます。ちなみにはちまきをするので見えないのですが、実は「十六」にはちゃんと眉毛があるんです。いつか見る機会があればじっくり御覧くださいね。
  次はです。「敦盛」は源平の戦に負けた平氏の公達なので「負け修羅」です。それでこの扇に注目してみると、「波間に沈む入り日」が描かれています。それでこれは「負け修羅」専用の扇というわけなのです。
  こうして見てみると、面も扇も、それぞれに一番ふさわしい時に用いられてこそその美しさを発揮するのだなと感じます。それは能を演じる人たちと、そしてそれを鑑賞しているみなさんが、一緒に一つの舞台を作り上げている時なのですね。


2015.9.5 龍田が無事に終わりました!!
 
  先日、浦田定期能にて、山崎浩之が「龍田」を舞わせていただきました。多くの方々のご来場により、ますます盛会となりました!
  写真は、私(?)の小学校の時の先生からいただいたお花です。いつも立派な花を、本当にありがとうございます!
  今回は秋の風情が舞台だけでなくロビーにまで溢れました!!
  これからもみなさん、応援よろしくお願いします!(^^)/
 


2015.8.9
今日は夏の歌仙会!
 毎年恒例の夏の歌仙会、今年もやって参りました!なんだか一年があっという間ですね。

 連日のこの酷暑にも関わらず、みなさんお稽古の成果をいかんなく発揮なさってました!

 一昨年から会場が変わって、旧日銀・岡山支店の建物(現在はルネスホールという名前ですが)ですることになりました。
 今までと大きく変化したのは、客席が椅子席になったこと。内輪の会なのでとても和やかな雰囲気なのですが、今までは座布団でした。机と椅子だとすごくらくちん!お年の方も多いですし、ゆったりできていいです。

 膝が悪くて正座できないという方も、椅子に座ってしていただけます!見学も自由ですのでみなさんぜひぜひ!